キャデラック・ATS

キャデラック・ATS

ATSは、アメリカの自動車メーカーであるゼネラルモーターズ（GM）が製造し、プレミアムブランドであるキャデラックから展開されていたセダン型乗用車です。より大型のモデルであるCTSの下位に位置づけられるコンパクトなFR（フロントエンジン・リアドライブ）セダンとして開発されました。

概要

その開発は、CTSに続くモデルとして進められ、2012年1月に開催された北米国際自動車ショー（デトロイトショー）で世界に向けて初めて披露されました。発表後間もなく、同年8月には主要市場である北米での販売が開始され、その後はヨーロッパ、日本、そして中国といった各国の市場にも順次投入されました。日本市場においては、2013年3月2日に正式に発売されています。日本国内で正規販売されたモデルは、直列4気筒2.0Lターボエンジンに6速オートマチックトランスミッションを組み合わせた仕様のみが展開されました。その高い走行性能と革新性が評価され、ATSは2013年に権威ある「北米カー・オブ・ザ・イヤー」を受賞しています。

メカニズム

ATSの最大の特徴の一つは、その基盤となるプラットフォームにあります。これは、キャデラックの「シグマ・アーキテクチャ」の中でも「シグマIIプラットフォーム」よりもさらに軽量かつコンパクト化を目指して新たに開発された、FR車専用の「アルファ・アーキテクチャ」と呼ばれるプラットフォームです。この新開発プラットフォームの採用により、理想的な前後重量配分である50:50を実現し、優れた運動性能を獲得しました。サスペンションについては、リアサスペンションはCTSと同様のマルチリンク式を採用していますが、フロントサスペンションには、よりスペース効率に優れる新開発のストラット式が用いられています（参考として、CTSのフロントはダブルウィッシュボーン式です）。

エンジンラインナップとしては、仕向け地によって複数の選択肢が用意されました。具体的には、「エコテック」と呼ばれる直列4気筒2.0L直噴DOHCターボエンジンと、同じく直列4気筒の2.5L直噴DOHCエンジン。そして、「LFX」のコードネームを持つV型6気筒3.6L直噴DOHCエンジンです。これらのエンジンは全て可変バルブ機構を備えています。トランスミッションは、基本的に全エンジンで6速オートマチックが標準装備とされていましたが、2.0Lターボモデルにはオプションで6速マニュアルトランスミッションも設定されました。走行性能へのこだわりは他の部分にも見られ、全車にランフラットタイヤが標準装備されたほか、一部のグレードでは高性能なブレンボ製のブレーキシステムが奢られています。ボディ構造においては、高張力鋼板を多用することで大幅な軽量化が図られており、同クラスであるDセグメントの車両としては非常に軽量な部類に入ります。これにより、優れた運動性能と燃費性能に貢献しています。

装備

インテリアの主要な装備としては、すでに先行して発表されていたクロスオーバーSUVモデルであるSRXにも搭載されていた「CUE（Cadillac User Experience）」システムが挙げられます。CUEは、オーディオやエアコン、ナビゲーションといった各種機能をセンターコンソールに設けられたタッチスクリーンモニターを介して操作するインフォテインメントシステムです。その操作感は、現代のスマートフォンのような直感的な操作を目指しており、さらに操作の決定時などに軽微な振動（ハプティックフィードバック）を与えることで、ユーザーに確実な操作感を伝える工夫が凝らされています。

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