キャデラック・XT4

XT4（エックスティー・フォー）は、アメリカ合衆国の自動車メーカーであるゼネラルモーターズ（GM）が製造し、傘下のプレミアムブランドであるキャデラックから販売される乗用車です。ブランドのSUVラインアップにおいて、先に登場していたXT5に続くモデルであり、キャデラックとしては初めてのコンパクトSUVとして位置づけられています。市場においては、BMW X1、アウディ Q3、メルセデス・ベンツ GLAといった、欧州主要メーカーのコンパクトSUVが主な競合車種と目されました。

初代モデルの特徴

2018年3月のニューヨーク・モーターショーで初めて披露されたXT4は、ターゲットとなる顧客層と同世代の若手デザイナーチームが内外装のデザインを主導しました。エクステリアは、見る角度を選ばない大胆かつスポーティなシルエットを追求。前後ランプには先進のLED技術が採用され、特にヘッドライトにはデイタイムランニングライトとして機能するL字型のブレードが配されました。

インテリアは立体的な造形が特徴で、質感の高い素材を組み合わせたインサートやトリム表皮が用いられています。クラフトマンシップを感じさせる上質な本革シートは、流麗なラインと共に室内のプレミアム感を高めています。後席のレッグルームは1,004mm、荷室容量は通常時で637リットル（最大1,385リットル）と、いずれもクラストップレベルの広さを実現しました。

快適性への配慮も行き届いています。ワイドな後方視界を確保するリヤカメラミラーや、乗員一人ひとりに最適なサウンドを提供するBOSE製13スピーカーオーディオシステムを装備。さらに、各種吸音材や遮音材、アクティブノイズキャンセレーション技術などを組み合わせることで、優れた静粛性を実現しています。

先進装備としては、タッチスクリーン操作に加え、ロータリーコントローラーや物理スイッチでも操作可能な最新世代の「キャデラック・ユーザー・エクスペリエンス」インフォテインメントシステムを搭載。NFCによる素早いペアリングや、より効率的な給電を可能にしたワイヤレス充電機能も採用されました。ナビゲーションシステムには、GMジャパンが株式会社ゼンリンデータコムと共同開発した完全通信型「クラウドストリーミングナビ」を採用。これは、トンネル内などGPS信号が届きにくい状況でも自律航法を可能にするものでした。

パワートレインには、高出力と燃費効率を両立する新開発の2.0リッター直列4気筒直噴ターボエンジンを搭載し、滑らかな変速を実現する9速オートマチックトランスミッションと組み合わされます。エンジンには、低負荷走行時に一部シリンダーを休止する気筒休止システムやアイドリングストップ機能に加え、低回転域でのターボラグを抑制し、自然吸気エンジンのような応答性を実現するツイン・スクロール・ターボシステムを採用。また、オプション設定のツインクラッチAWDシステムは、必要に応じて後輪への駆動伝達を完全に遮断することで、駆動系のフリクションロス低減に貢献しました。

安全装備面では、レーダー、カメラ、センサーなどを活用したエマージェンシーブレーキシステム（フロントオートマチック歩行者対応ブレーキ／リヤオートマチックブレーキ）やアダプティブクルーズコントロール、サイドブラインドゾーンアラートなど、20種類以上の先進運転支援システム（ADAS）が用意され、高い安全性を追求しています。

日本市場への導入と展開

日本市場へは、2021年1月15日の東京オートサロン2021にて国内初披露され、翌日より販売が開始されました。当初のラインアップは「プレミアム」「スポーツ」「プラチナム」の3グレード展開で、全車が左ハンドル仕様でした。デリバリーは同年2月から順次開始されました。

2022年1月20日には仕様変更が実施され、既存のボディカラーの入れ替えや追加により、新色を含む全6色から選択可能となりました。同年10月20日には、特別仕様車「ラテエディション」を20台限定で発売。「スポーツ」グレードをベースに、エクステリアに新色の「ラテメタリック」を、インテリアには統一感のあるペールトーンの内装色を採用したモデルでした。

フェイスリフトと派生モデル

グローバルでは2023年3月にフェイスリフトが実施されました。エクステリアでは、ボディ両端に配置されたLEDヘッドライトや、リアバンパーおよびリフレクターの意匠が縦基調に変更され、グロスブラックのスポーツメッシュグリルにはアクティブグリルシャッターが新たに設けられました。インテリアには新素材のメタルインサートが使用され、ダッシュボード上部には9K解像度の湾曲した33インチアドバンストカラーLEDディスプレイが配置されました。オーディオシステムもAKG製の14スピーカーシステムへと刷新されています。

同年5月には、このフェイスリフト後のモデルをベースとした中国市場向けの派生モデル「キャデラック・GT4」がワールドプレミアされました。XT4のクーペ版にあたるモデルです。

生産終了と日本市場の最終モデル

2024年11月、米国での製造拠点であるカンザス州フェアファックス工場が次世代シボレー・ボルトEVの生産へ移行することに伴い、翌2025年1月をもってXT4の米国生産を終了すると発表されました。これを受け、日本市場においても、同年12月3日に発表されたマイナーチェンジモデルが、日本における最終モデルとなることがアナウンスされました。

日本市場向け最終モデルとなるマイナーチェンジ版は、最新のデザイン哲学を反映し、内外装が一新されました。また、先進安全装備が強化され、ブラインドゾーンステアリングアシストとサイドバイシクルアラートが新たに追加されています。ラインアップやカラーバリエーションは大幅に整理され、「スポーツ」グレードの1種類のみとなりました。インテリアのステッチアクセントは従来のレッドからブルーに変更され、20インチのアルミホイールも新しいデザインとなりました。

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