キャデラック・XTS

キャデラック XTS

キャデラック XTS（エックスティーエス）は、ゼネラルモーターズ（GM）が製造し、キャデラックブランドで販売していた大型高級セダンです。キャデラックのそれまでのフラッグシップモデルに近い位置づけにあったSTSおよびDTSの両モデルを統合した後継として開発されました。

開発と市場投入

XTSの起源は、2010年のデトロイトショーで発表されたコンセプトカー「XTSプラチナコンセプト」に遡ります。このコンセプトモデルはプラグインハイブリッドとして登場し、その後の市販モデルの方向性を示唆しました。2011年のロサンゼルスオートショーで市販仕様が披露され、翌2012年5月には北米市場での販売が開始されました。その後、広大な中国市場や日本市場にも導入され、グローバルに展開されました。

プラットフォームと駆動方式

XTSには、GMが開発した「イプシロンIIプラットフォーム」、通称「イプシロン・アーキテクチャ」が基盤として採用されました。このプラットフォームは、シボレー・インパラやビュイック・ラクロスなど、他のGM製大型車とも共通するもので、前輪駆動（FF）および四輪駆動（4WD）に対応していました。駆動方式に関しては、DTSと同様にFFを基本としつつも、STSの後継としては、セビル以来となるFFレイアウトのキャデラック大型セダンという側面も持っていました。

パワートレイン

搭載されたエンジンは、主に3.6リッターV型6気筒直噴DOHCの「LFX」型が設定されました。このエンジンは可変バルブタイミング機構を備え、効率と性能を両立させています。さらに、中国市場向けには、ATSにも採用された2.0リッター直列4気筒直噴DOHCターボの「エコテック」エンジンも用意されました。こちらも可変バルブタイミング機構を搭載しています。トランスミッションは、全モデルで6速オートマチックトランスミッション（6AT）が組み合わされました。グレード構成は、「スタンダード」「ラグジュアリー」「プレミアム」「プラチナム」の4種類が展開されました。

インテリアとテクノロジー

XTSのインテリアにおける最大の革新は、SRXで先行導入されたインフォテインメントシステム「CUE（Cadillac User Experience）」でした。このシステムは、オーディオ、エアコン、ナビゲーションといった車両機能の操作を、センターコンソールの大型モニターを介して行うもので、スマートフォンのように直感的なタッチ操作を可能にしました。さらに、CUEは操作確定時に軽い振動による触覚フィードバックを提供する機能を備え、操作の正確性と使いやすさを向上させていました。

安全装備

安全面では、先進の運転支援システムが数多く採用されました。衝突の危険が迫った際に、シート座面を振動させることでドライバーに警告を発する「セーフティ・アラート・ドライバーシート」は特徴的な機能の一つです。この他にも、車線からの逸脱を警告する「車線逸脱警告機能」、前方車両との衝突リスクを知らせる「前方衝突事前警告機能」、そして斜め後方の死角に存在する車両を検知・警告する「サイドブラインドゾーン アラート」など、多岐にわたる安全技術が搭載されました。

日本市場での展開

日本市場では、ヤナセの子会社であるヤナセグローバルモーターズによって輸入・販売されました。導入されたのは最上級グレードの「プラチナム」のみで、駆動方式はFF、ナビゲーションシステムはオプション設定でした。しかし、日本市場に導入されたのは左ハンドル仕様のみであり、かつて右ハンドルも選択できたセビルやSTSからの乗り換えを検討していた顧客にとっては、操作系統の違いがハードルとなり、スムーズな移行が進まなかったとされます。このことが販売不振の一因となり、XTSは発売当初から期待された販売実績を上げることができず、結果として2014年末をもって日本での販売を終了しました。

後継モデル

XTSの後継モデルとしては、キャデラックの新たなフラッグシップセダンとして開発されたキャデラック・CT6が登場しました。CT6は、より軽量な新型プラットフォームを採用するなど、XTSとは異なるアプローチで開発されたモデルです。

キャデラック XTSは、現代的なデザインと先進技術を取り入れ、キャデラックの大型セダンラインナップにおける過渡期を担ったモデルと言えます。特に、日本市場においては、ハンドリング設定が販売に影響を与えた事例として記憶されています。

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