キャプタン

キャプタンについて

キャプタン（英: Captan）は、有機化合物であり、その化学式はC9H8Cl3NO2Sです。主に農業分野において、殺菌剤や防カビ剤として広く利用されています。

用途

キャプタンは、N-ハロアルキルチオ系の殺菌剤としてさまざまな用途に用いられています。具体的には、野菜種子の消毒、キュウリのべと病対策、トマトや観賞用植物における病害の防除、さらにはハウス栽培のトマトやイチゴの灰色かび病対策などに利用されます。市販されている商品名には「オーソサイド」、および複合剤として「オキシラン」「キャプレート」「スミメート」などがあります。

また、キャプタンはプラスチック製品の防カビ剤としても使用されており、その効果は農業用途に限らず幅広い分野で発揮されています。具体的には、細菌に対する最小発育阻止濃度（MIC）がクロコウジカビや黄色ブドウ球菌に対して30ppmとなっており、強力な防除効果を示します。農業においては、野菜のべと病、炭疽病、リンゴの黒点病、斑点落葉病などの防除に効果的です。

キャプタンは熱に対して安定性を持っていますが、TBZやカルベンダジンといったベンゾイミダゾール系化合物と比較すると、その持続性には劣る点もあります。このため、使用方法や効果の持続時間については注意が必要です。

安全性

キャプタンの安全性については、注意が必要です。とりわけ、1日の摂取許容量（ADI）は0.125mg/kg/dayと設定されており、半数致死量（LD50）はラットに対する経口投与で3,677mg/kg、皮下投与で5,000mg/kg以上となっています。このことから、発癌の可能性が指摘されています。

さらに、魚に対する毒性もやや強いとされ、コイにおけるTLmは0.25ppmに達し、毒性区分はB類に分類されています。加熱すると、塩化水素や窒素酸化物、硫黄酸化物、ホスゲンといった有毒ガスを生成するため、取り扱いには十分な注意が求められます。また、有機溶剤を含む製剤は可燃性であることから、火気にも注意が必要です。代謝生成物としてはフォルペットが生じることも確認されています。

脚注・参考文献

この記事に関する詳細な参考文献として、以下の文献があります。

• - 『抗菌剤の化学 Part2』西野敦編著、冨岡敏一・荒川正澄著、1997年、工業調査会刊、ISBN 476937058X

関連項目

キャプタンに似た構造を持つ殺菌剤であるカプタホールもありますが、現在では多くの国で使用が禁止されています。キャプタンの取り扱いや使用にあたっては、その特性や規制に関する情報を十分に理解しておくことが重要です。

もう一度検索