キャンディ (スリランカ)

キャンディ：歴史と文化が息づくスリランカの古都

キャンディは、スリランカ中部州の州都であり、人口約12万人の都市です。かつてシンハラ人のキャンディ王国の都として栄え、現在でもスリランカ中部の中心的な都市としての役割を担っています。キャンディという名称は、シンハラ語で「山」を意味する「カンダ」が転じたもので、別名「マハー・ヌワラ（大都市あるいは首都）」とも呼ばれています。

キャンディの歴史的・宗教的背景

キャンディは、スリランカ仏教の聖地であり、シンハラ王朝最後の都としての歴史的背景を持つ重要な都市です。この都市の文化的価値が認められ、ユネスコ世界遺産にも登録されています。特に有名なのが、仏陀の歯が祀られているとされる仏歯寺（ダラダー・マーリガーワ寺院）です。

4世紀にインドのカリンガ国から持ち込まれたとされる仏歯は、アヌラーダプラのダンマチャッカに安置され、王権の象徴とされました。その後、王都の移動とともに仏歯も移動し、現在はキャンディの仏歯寺に納められています。仏歯は、仏陀の聖遺物として崇拝されるだけでなく、強い力を持つ神聖な存在としても崇められてきました。

エサラ・ペラヘラ祭

毎年7月の満月頃に開催されるエサラ・ペラヘラ祭は、キャンディを代表する祭りの一つです。この祭りでは、仏歯が象の背中に乗せられ、神々の象徴である武器と共に街中を練り歩きます。ペラヘラとは行列を意味し、祭りの行列はかつての王国の秩序を示すものとされています。また、仏歯には雨を呼ぶ力があるとも信じられており、豊作を祈願する対象でもあります。

世界遺産「聖地キャンディ」

1983年、仏歯寺や王宮建造物群を含むキャンディの文化財は、「聖地キャンディ」としてユネスコの世界遺産（文化遺産）に登録されました。キャンディはスリランカの仏教徒にとって重要な巡礼地であり、特に仏歯寺には多くの人々が仏歯を拝むために訪れます。

世界遺産としての登録基準は以下の通りです。

(4) 人類の歴史上重要な時代を例証する建築様式、建築物群、技術の集積または景観の優れた例。
(6) 顕著で普遍的な意義を有する出来事、現存する伝統、思想、信仰または芸術的、文学的作品と直接にまたは明白に関連するもの（この基準は他の基準と組み合わせて用いるのが望ましいと世界遺産委員会は考えている）。

キャンディの地理と都市構造

キャンディの市街は、スリランカ中央高地の標高約465mに位置しています。旧王朝時代の行政府やキャンディ湖を中心に都市が発展しており、ペラデニヤ植物園が都市に開放感を与えています。湖の北岸には19世紀に作られた白い石の欄干があり、王宮や仏歯寺とともに都市の宗教的なモニュメントとなっています。

仏歯寺は18世紀の再建により、かつての首都アヌラーダプラの寺院に影響を受けた花崗岩造りの建造物となりました。石灰岩、大理石、彫刻された木材、象牙といった様々な素材が用いられ、その荘厳さを際立たせています。キャンディ市内には多くの僧院も見られます。

現在も市街は成長を続けており、大学や植物園のあるペラデニヤ、北部のカトゥガストタ、東部のクンダセイル、Tennekumbura、Gurudeniyaといった地域にまで広がっています。

キャンディの気候と自然

キャンディは内陸部の密林に覆われた山岳地帯に位置しており、ナックル山脈やハンターナ山脈に囲まれています。標高は約500mで、比較的湿潤で涼しい気候です。12月から4月が乾季、5月から7月と12月から1月がモンスーンの季節となり、天候は不安定になります。1月が最も涼しく、7月が最も暑い時期です。3月から5月中旬にかけては、軽い雨が続き湿度が高くなります。

キャンディの人口と経済

キャンディはシンハラ人が多数派を占める都市ですが、ムーア人やタミル人も居住しています。経済の中心地としては、コロンボに次ぐスリランカ第2の規模を誇り、中部州の州都としても機能しています。繊維、家具、IT、宝石などの産業が集まっており、多くの大企業が支社を置いています。また、多くの農業研究所もキャンディに立地しています。

キャンディの中心部には大型ショッピングセンター「キャンディ・シティ・センター」があり、国内外のブランド品を取り扱っています。

キャンディの交通網

キャンディでは、バスを基盤とした公共交通システムが発達しており、民間と公営のスリランカ交通局 (SLTB) によって運行されています。近郊のクンダセイルにはキャンディ空港の建設が提案されており、実現すればコロンボとの直結が期待されます。

キャンディには主要な幹線道路が複数通っており、コロンボやジャフナなどの主要都市と結ばれています。

A1ハイウェイ：キャンディとコロンボを結ぶ
A9ハイウェイ：キャンディとジャフナを結ぶ
A10ハイウェイ：キャンディからカトゥガストタを経由してクルネーガラを結ぶ
A26ハイウェイ：キャンディからマヒヤンガナを経由してPadiyathalawaを結ぶ

また、コロンボとキャンディを結ぶ高速道路の建設も計画されており、実現すれば両都市間の移動時間が大幅に短縮される見込みです。

鉄道は、コロンボからバドゥッラへと向かうメインラインに接続するマータレー線が、ペラデニヤ駅とキャンディ駅を経由してマータレーまで続いています。

キャンディの見どころ

キャンディには、歴史的な建造物や文化施設、自然豊かなスポットが数多く存在します。

名所・旧跡

キャンディ王宮
ダラダー・マーリガーワ寺院（仏歯寺）
エンベッカ寺院
ガダラデニヤ寺院
デガルドルワ寺院
ランカティラカ寺院

文化施設

キャンディ国立博物館
ペラデニヤ植物園

教育施設

ペラデニヤ大学

スポーツ施設

ボガンバラ・スタジアム

キャンディ出身の著名人

キャンディは多くの著名人を輩出しています。

にしゃんた：日本で活躍するタレント・社会学者
ガミニ・ディサーナーヤカ：政治家、第9代野党代表

姉妹都市

* 臼杵市（日本・大分県）

キャンディは、歴史、文化、自然が調和した魅力的な都市です。スリランカを訪れる際には、ぜひ立ち寄ってみてください。

もう一度検索