キャンディ (原田真二の曲)

キャンディ (Candy)

「キャンディ」は、日本のミュージシャン、原田真二によって発表された楽曲です。1977年 11月25日に、彼のセカンドシングルとしてリリースされました。当時、原田真二は3ヶ月連続でシングルを発表するという、異例の「トリプルデビュー」を敢行しており、本作はその第2弾として世に送り出されました。

楽曲制作の背景

このシングルでは、表題曲「キャンディ」だけでなく、カップリングに収録された「グッド・ラック」も含め、原田自身が編曲を手がけています。レコーディングに参加したミュージシャンは、原田のライブバンド「WAVE」の初期メンバーであった古田たかし（ドラムス）、デイブ伊藤（フレットレスベース）、Kaz南沢（エレクトリックギター）らを中心に構成されました。特筆すべきは、原田を含めた参加メンバー3名が10代という、当時としては非常に若手中心の布陣であったことです。

原田真二はテレビ出演の際に、ピアノを弾きながら歌うスタイルが特徴的でしたが、「キャンディ」のレコーディングにおいては、より繊細でクラシカルな響きを持つチェンバロを演奏しています。一方、カップリングの「グッド・ラック」ではピアノやシンセサイザー、ソリーナを使用。この楽曲のホーンセクションには、アミューズとの繋がりから、新田一郎率いるホーン・スペクトラムが参加し、楽曲に厚みを加えています。

作詞のエピソード

作詞は、原田の初期作品の多くを手がけた松本隆が担当しました。松本自身が後に語ったところによれば、「キャンディ」の歌詞は、当時の締切が迫る中で、偶然目にした少女漫画『キャンディ・キャンディ』にインスパイアされて書き上げられたとのことです。このエピソードは、彼の作詞家生活を振り返る書籍『風街図鑑』のセルフライナーノーツの中で明かされています。

ライブでの反響と変遷

「キャンディ」がリリースされた当時、原田真二は優れた音楽性と端正なルックスから熱狂的な人気を博しました。レコード発売時の公開番組などでは、楽曲の演奏中に女性ファンから「シンジ！」という熱いコールが沸き起こる現象が見られました。しかし、原田自身は当時、洋楽的なサウンドを追求しており、日本の歌謡界やアイドル的な扱いを受けることに抵抗を感じていた時期であったため、このコールにも複雑な思いを抱いていたと語っています。

時代の流れと共に、この「シンジコール」を巡る状況は変化しました。2000年代以降、原田真二はライブにおいて、かつては抵抗を感じていた「シンジコール」を、逆に観客に求めるパフォーマンスを行うようになります。「シンジが足りない！」、「もっとシンジが欲しいんだ！」などと、冗談めかしてコールを促す場面が増加しました。

特に2008年頃からは、イベント的なライブで場の盛り上げを図る際、「キャンディ」の歌唱時に、自身のデビュー当時の状況や「今ではシンジが足りない」といった説明を交えながら、観客に自ら「シンジコール」を促すのが、一種のお約束となっています。2011年に行われたライブイベント「コンチネンタルスターPresents Special Music Show 2011」では、原田が観客にコールを要求する様子が、テレビ朝日のワイドショー「モーニングバード！」で取り上げられ、そのエピソードが広く紹介されました。

収録曲

両曲とも作詞：松本隆、作曲：原田真二。

キャンディ (3分42秒)
編曲：原田真二・阿部雅士
グッド・ラック (4分14秒)
編曲：原田真二

ミュージシャン

キャンディ
原田真二：チェンバロ・バッキングボーカル
古田たかし：ドラムス
デイブ伊藤：フレットレスベース
Kaz南沢：エレクトリック・ギター
池田雅彦：アコースティック・ギター
トマトカルテット：ストリングス

グッド・ラック
原田真二：ピアノ・シンセサイザー・ソリーナ
古田たかし：ドラムス
デイブ伊藤：フレットレスベース
Kaz南沢：エレクトリック・ギター
ホーンスペクトラム（中村哲・新田一郎・兼崎順一）：ブラス・セクション

主な収録アルバム

オリジナルアルバム『Feel Happy』をはじめ、数多くのベストアルバム、ライブアルバム、セルフカバーアルバムに収録されています。代表的なものとして、『Feel Free』（リメイクバージョン収録）、『GOLDEN☆BEST 原田真二 OUR SONG〜彼の歌は君の歌〜』、『Shinji Harada at Budokan '78〜Time Travel〜』などが挙げられます。

主なカバーアーティスト

「キャンディ」は発表以来、時代を超えて多くのアーティストによってカバーされています。CD音源化されたもの、ライブやテレビ番組での披露にとどまるものなど様々です。

CD音源化された主な例

ROCKAPELLA (1992年)
太田裕美 (1999年) - 松本隆作詞家生活30周年記念アルバム『Candy』に収録。
斉藤和義 (2007年)
島谷ひとみ (2007年)
荻野目洋子 (2009年)
青山テルマ (2010年)
斎藤工 (2015年) - トリビュートカバーアルバム『風街であひませう』の特典ディスクに歌詞朗読を収録。
原田知世 (2016年) - カバーアルバム『恋愛小説2 -若葉のころ』に収録。
三浦大知 (2021年) - 松本隆トリビュートアルバム『風街に連れてって！』収録。

その他、ライブやテレビ番組で大江千里、清春、Mr.Childrenら多数のアーティストがカバーしています。