キャンプ淵野辺

キャンプ淵野辺

キャンプ淵野辺（Camp Fuchinobe）は、かつて神奈川県相模原市に所在した在日米軍施設です。施設番号はFAC 3080で、アメリカ陸軍が管轄していました。所在地は現在の相模原市中央区高根3丁目、由野台3丁目、弥栄3丁目に相当し、最終返還時の面積は663,300.77平方メートルでした。1968年当時、114人の日本人従業員が勤務していました。

1945年9月、アメリカ軍が旧陸軍機甲整備学校を接収し、訓練場区域を除いた部分をキャンプ淵野辺として使用を開始しました。当初は、横浜技術廠（YED）相模工廠などに勤務する軍人や軍属の住宅施設として利用され、事務所、兵舎、家族住宅のほか、倉庫、家具修理工場、軍用犬舎、乗馬場、ピクニック広場、プール、テニスコート、野球場、ボウリング場、PX（売店）、図書館、学校（フチノベ・エレメンタリースクール）などが設けられました。

また、アメリカ国家安全保障局太平洋代表部（NSAPACREP）在日事務所が置かれ、アメリカ大使館、府中空軍施設（東京都府中市）、上瀬谷通信施設（神奈川県横浜市瀬谷区）、キャンプ・ドレイク（埼玉県朝霞市）などと連携し、情報収集・諜報活動を行う重要な拠点としての役割も担いました。基地内には複数の受信用ロンビックアンテナが設置され、1960年代半ばには、基地周辺の建築物の高さや機械の操作を制限する「電波障害防止制限地域」に指定するよう要求されましたが、相模原市の市街化が進んでいたことから反発を招き、基地の全面返還を求める動きにつながりました。

1960年代末から70年代初めにかけて、アメリカ国防予算の削減やニクソン・ドクトリンによる海外展開兵力削減方針、首都圏の都市問題対策などから、在日米軍部隊や基地の再編・調整が行われ、キャンプ淵野辺の機能は縮小しました。1973年1月の第14回日米安全保障協議委員会で、1974年度内の全面返還が合意され、キャンプ座間などへの代替施設の建設を経て、1974年11月30日に全面返還されました。返還後、不審火で戦時中の建物が焼失したり、アメリカ軍のヘリコプターが不時着する事故が発生しました。

沿革

1945年9月2日：アメリカ軍が旧陸軍機甲整備学校を接収し、キャンプ淵ノ辺として使用開始。
1952年7月26日：キャンプ淵ノ辺の提供に関する政府間協定が締結。
1956年1月19日：接収対象外だった旧機甲整備学校の工作機械などの返還が決定。
1956年6月27日：政府間協定に基づき、キャンプ淵ノ辺における提供財産の明細が規定。
1957年7月25日：日米合同委員会施設分科委員会で簡易住宅56棟の建設・追加提供が決定。
1961年4月19日：名称が「キヤンプ淵ノ辺」から「キャンプ淵野辺」に変更。
1962年12月20日：土地約1,045平方メートルが一部返還。
1965年7月：アメリカ側が電波障害防止制限地区への指定を申し入れ。
1970年10月28日：囲障区域外に設置されていた汚水処理場が移設され、土地と工作物が一部返還。
1973年1月23日：第14回日米安全保障協議委員会で全面返還に合意。
1974年4月10日：基地内のNSA地区に設置されていた囲障が相模総合補給廠に移設。
1974年11月30日：全面返還。

跡地の利用

キャンプ淵野辺の跡地は、国利用地、地元利用地、将来の需要に備えた留保地に三分割し、有償で処分する「三分割有償処分方式」が初めて適用されました。この方式は、米軍基地の返還に伴う費用を捻出する目的で定められましたが、地元からは、都市計画を妨げられてきたことに対する反発や、財政負担の増大への懸念が生じました。相模原市をはじめ、他の米軍基地跡地を抱える地方自治体でも反対運動が起きましたが、最終的にはこの方式に基づいて跡地利用が進められました。

国利用地には、国民生活センター、国民年金保養センターさがみの、東京国立近代美術館フィルムセンター相模分館、宇宙航空研究開発機構（JAXA）、神奈川県警総合研修センターが建設されました。地元利用地には、市立弥栄小学校、市立弥栄中学校、市立由野台中学校、県立弥栄東･西高校（現 県立相模原弥栄高校）、市立淵野辺公園、市立博物館が建設されました。留保地は、1995年に市立博物館が建設された以外は未利用でしたが、2003年に国の方針が変更され、整備・利用計画が進められています。

参考資料

企画市民局企画部土地利用調整課 (2011年11月). “キャンプ淵野辺留保地整備計画” (PDF). 市政情報. 相模原市役所. 2017年4月7日閲覧。

関連項目

陸軍機甲整備学校
アメリカ国家安全保障局
淵野辺公園

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