キャンベルタウン (駆逐艦)

HMSキャンベルタウン：数奇な運命を辿った駆逐艦

HMSキャンベルタウンは、第二次世界大戦におけるイギリス海軍のタウン級駆逐艦として知られています。しかし、その誕生はアメリカ海軍に遡ります。元々はウィックス級駆逐艦USSブキャナンとして、1918年6月29日にメイン州バスのバス鉄工所で起工されました。1919年1月20日に就役し、1939年には予備役艦隊に編入されますが、1940年の駆逐艦・基地協定により、イギリス海軍へと譲渡されることになります。

50隻の駆逐艦がアメリカからイギリスへと渡る中、USSブキャナンはその1隻として選ばれました。1940年9月3日、イギリス海軍に引き渡され、9月9日にはカナダのハリファックスでイギリス海軍艦艇として正式に就役。HMSキャンベルタウンと改名された艦は、ハリファックスを出発し、ニューファンドランドのセントジョンズを経由してプリマスを目指しました。9月29日にデボンポート造船所に到着すると、イギリス海軍の要求に応じた改修工事が10月末まで続けられました。

11月1日には港湾内航行試験が完了し、ウェスタンアプローチを活動海域とする第17船団への配属が決定。しかし、翌日には海上公試中に輸送船リジーと衝突事故を起こし、リヴァプールで修理を受ける事態に。その後、再び船団に加わったものの、11月29日には沿岸輸送船フィダウンと衝突し、沈没させてしまう事故を起こしてしまいます。12月初旬から任務に就きましたが、12月3日には輸送艦コーモスと衝突事故を起こし、再びドック入り。3月下旬まで修理が続き、この際に第4煙突の短縮などの改修が行われました。

3月28日に修理が完了すると、キャンベルタウンはオランダ海軍に貸与され、4月から5月にかけて第7護衛艦群に配属されました。オランダ側は艦名をミデルブルグと改名することを希望しましたが、イギリス側は米海軍との合意に基づく命名規則に反するとして拒否しています。6月から修理に入り、7月から8月にかけて再び護衛任務に就き、9月にはイギリス海軍に艦籍が返還されました。その後、乗組員の引き継ぎなどの手続きを経て、10月にはイギリス海軍艦艇としての任務に復帰し、英国と西アフリカ間の輸送船団の警備にあたりました。9月15日には空襲を受けたノルウェー船籍のタンカーヴィンガ号の乗組員救助にも参加しています。11月から12月にかけて護衛任務に参加した後、修理のためデボンポートに向かいました。

1月よりデボンポートでドック入りして修理を受けていた最中、キャンベルタウンは、サン＝ナゼール強襲（チャリオット作戦）への投入が決定。作戦に向けた改修が行われることになり、通常任務からは離脱しました。この作戦は、連合軍にとって大きな脅威となっていたドイツ戦艦ティルピッツの大西洋進出を阻止するためのものでした。ティルピッツの拠点となりうる大西洋沿岸の唯一の場所が、ノルマンディ・ドックと呼ばれる大型乾ドックを備えるサン＝ナゼールであり、これを破壊することが作戦の目的でした。

火船として投入されることになったキャンベルタウンは、2月を通じて改修を受けました。第3、第4煙突は完全に撤去され、残りの煙突はドイツ海軍の艦艇に似せるため切り詰められました。武装も変更され、艦橋などには増加装甲が施されました。大幅な軽量化が必要だったため、艦内の居住区などは完全に撤去されました。アマトール爆薬4.5ショートトンが搭載され、3月25日、キャンベルタウンは作戦艦艇群とともにファルマスを出港しました。

3月28日01時34分、キャンベルタウンはドックのゲートに突入。乗組員とコマンドス隊員は下船し、ドック内の港湾設備の破壊に着手しました。作戦に参加した将兵611名中162名が戦死、215名が捕虜となりました。3月28日正午、予定より1時間半遅れてキャンベルタウンは大爆発を起こしました。爆発により乾ドックは完全に水没し、第二次世界大戦の残りの期間を通じてその機能を喪失しました。キャンベルタウン艦長のビーティ少佐は捕虜となりましたが、後にヴィクトリア十字章、そして1947年にはフランスからレジオンドヌール勲章を授与されました。

戦後、キャンベルタウンの号鐘は回収され、アメリカ・ペンシルバニア州キャンベルタウンに寄贈されました。2021年5月19日には、計画中の31型フリゲートの1隻にHMSキャンベルタウンと命名されることが発表されました。サン＝ナゼール強襲における戦歴が、将来のコマンド部隊にインスピレーションを与えるものとして、その名が受け継がれることになったのです。1952年の映画『封鎖作戦』は、キャンベルタウンをストーリーのモチーフにしています。

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