ヴィクトリア十字章

ヴィクトリア十字章

ヴィクトリア十字章（Victoria Cross）は、イギリスや英連邦諸国において軍人に授与される最高の戦功章です。このメダルは、敵前での勇気ある行動に対して授与され、受章者は「VC」という称号を用いることができます。特に、この勲章は他の勲章や記章の中でも特別な地位を持っており、装飾や名誉の記載順でも最上位に位置付けられています。

勲章の歴史と製造

この勲章は1856年1月29日に初めて授与され、多くはクリミア戦争における軍人に贈られました。初期のメダルは、セバストポリで捕獲したロシア製の大砲から鋳造されましたが、第一次世界大戦以降は中国軍の大砲が新たな材料として用いられるようになりました。ヴィクトリア十字章の製造は、制定当初よりロンドンのHancocksという会社が担当しています。

ヴィクトリア十字章のメダルは、幅35ミリメートルの十字形をしており、中央にはライオンの像と「For Valour（勇気に対して）」という文字が刻まれています。受章者が再度授与される場合は、リボンに飾板が付与され、略綬には増えたヴィクトリア十字が示されます。

授与の基準

この勲章は、敵に対して示された勇気のみに授与され、その基準は非常に厳格です。そのため、世界各国で設けられている戦功章の中でも受章が最も困難とされています。一般的にクロス章は他の勲章よりも下位に位置づけられていますが、ヴィクトリア十字章は特別な扱いを受けています。この他にも、同様に特別な地位を持つジョージ・クロスがありますが、これは敵前以外の場所での勇気に授与されます。

授与数と著名な受章者

1856年から現在までに、合計1,355のヴィクトリア十字章が授与されています。当初はイギリス本土の軍人のみが対象でしたが、20世紀初頭からは全ての軍人を対象に、死後の授与も行われるようになりました。最も多くの受章者を出したのは、1857年のインド大反乱におけるラクナウ包囲戦で、この戦で24人が授与されました。また、ボーイスカウトの創始者であるロバート・ベーデン・パウエル卿も、ボーア戦争中の功績により受章しています。

第一次世界大戦では633名が受章し、その中には187名の死後授与者が含まれます。ウォルター・リッチーはソンムの戦いにおいて同僚を鼓舞し、功績を称えられています。第二次世界大戦以降は受章者が減少し、最近では、2004年にイラク戦争中に英雄的行動を示したジョンソン・ベハリーが生存者として授与されました。

日本との関連

日本においても、いくつかのイギリス人が戦功によってヴィクトリア十字章を授与されています。例えば、下関戦争での功績によりダンカン・ボイズやトーマス・プライド等が授与されました。また、第二次世界大戦では、名の知れない無名兵士にもこの勲章が授与されています。

まとめ

ヴィクトリア十字章は単なる軍の勲章を超え、勇気の象徴としての存在感を放っています。受章者の勇気や献身は、多くの人々に感動を与え、歴史に深く刻まれています。その価値は、単なる金属の装飾以上の意味を持つと言えるでしょう。

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