キュロス1世

キュロス1世は、アケメネス朝のアンシャン王として知られています。彼の存在は、孫にあたるキュロス2世（大王）の業績によって、より一層注目されるようになりました。キュロス1世の治世は紀元前640年から600年頃、または紀元前610年から585年頃と推定されていますが、正確な年代は分かっていません。

キュロス1世に関する史料

キュロス1世に関する情報は、いくつかの史料から得ることができます。最も重要な史料の一つが、キュロス2世が残した円筒印章（キュロス・シリンダー）です。この印章には、キュロス1世が「アンシャンの大王」であり、「テイスペスの息子」であると記されています。同様の記述は、ヘロドトスの『歴史』や、ダレイオス1世のベヒストゥン碑文にも見られます。これらの史料は、キュロス1世がアケメネス朝の王統において重要な位置を占めていたことを示唆しています。

また、ペルセポリスで発見された粘土板や、エラム語で記された印章にも、「アンシャンのキュロス、テイスペスの息子」という銘文が見つかっています。これらの発見は、キュロス1世の実在を裏付けるとともに、当時のアンシャンという地域が、アケメネス朝にとって重要な拠点であったことを物語っています。

アッシリアとの関係

キュロス1世の時代、ペルシアはまだ小国の一つに過ぎませんでした。紀元前646年または639年、キュロス1世はアッシリアのアッシュールバニパル王に対し、長男のアルックを人質として差し出しています。アッシリアの文書には、「パルスマシュの王クラシュ」という記述が見られますが、この「クラシュ」をキュロス1世と同一人物と見なすかどうかについては、研究者の間で意見が分かれています。

メディアとの関係

当時、パルス地方を支配していたキュロス1世の兄弟、アリアラムナ1世は、メディア王国によって廃位されました。キュロス1世はメディアに従順な態度を示したため、メディアの支援を受け、アンシャンからパルサ地方にまで勢力を拡大することができました。この出来事は、キュロス1世が外交手腕に長けていたことを示唆しています。

キュロス1世の治世は、アケメネス朝が小国から大帝国へと発展する上で、重要な基礎を築いた時代であったと言えるでしょう。彼の政策や外交戦略は、孫のキュロス2世に受け継がれ、後のアケメネス朝の繁栄に繋がっていきました。

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