キューポラのある街 (映画)

『キューポラのある街』

『キューポラのある街』は、1962年4月8日に公開された日本映画であり、日活の助監督だった浦山桐郎にとって初の監督作品です。本作は、モノクロでシネマスコープ形式（2.35:1）で撮影され、99分の長さを持ちます。この映画は、第13回ブルーリボン賞の作品賞だけでなく、浦山監督自身も新人賞を受賞した作品でもあります。また、主演の吉永小百合は、当時わずか17歳での受賞で、彼女の名を一躍有名にしました。

製作の背景

1961年春、浦山は、発売されたばかりの小説『キューポラのある街』を見つけ、今村昌平とともにシナリオを完成させました。この作品は、吉永小百合の主演が決定的要因となり、浦山の初監督作品が制作されることとなりました。撮影は、1961年12月24日に開始され、埼玉県川口市や浦和の学校などで行われました。

公開当時、同時上映として『青年の椅子』があり、映画の評価も高く、1962年5月には、カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品されました。この際、審査委員のフランソワ・トリュフォーは、観客がこの映画の多様なテーマを理解できなかったことを残念がりました。

評価と受賞歴

『キューポラのある街』は、同年の『キネマ旬報』で日本映画ベストテンの第2位に選ばれ、『映画評論』では第1位に選出されました。さらに、第13回ブルーリボン賞でも作品賞とともに、浦山は新人賞、吉永は主演女優賞を手にし、浦山は日本映画監督協会新人賞も受賞しました。

その後、1965年には、続編として『未成年 続・キューポラのある街』が公開されました。1989年には、文藝春秋が行ったアンケート企画で、日本映画ベスト150にランクインしました。

ストーリー

物語は、埼玉県川口市の鋳物工場を背景に展開されます。鋳物職人の長女である中学3年生のジュンは、全日制の高校進学を目指していますが、家庭の経済状況が厳しくなっていきます。父・辰五郎が怪我をし、職を失う中で、ジュンがアルバイトをしながら学業との両立を図ります。その一方で、母・トミも働き始め、弟たちの世話もこなしています。

学級会では教師が生徒たちの貧困に理解を示し、ジュンに助けの手を差し伸べるシーンも描かれます。しかし、辰五郎が新たな職場での試練に苦しむ様子や、ジュンが社会での自立を考える場面もあり、家族の絆や成長がテーマとなっています。

ジュンが不登校になり、さまざまな経験を通して成長し、自立へと向かう姿は、同世代の観客にも強く共鳴します。では、最終的にジュンがどのようにして自分の道を見出すのか、その過程が感動を呼びます。

本作では、在日朝鮮人の帰還事業についても触れられており、当時の社会背景や家族の物語が交錯します。大きなテーマを含んだこの作品は、時代を超えた普遍的なメッセージを持ち続けています。

キャストとスタッフ

主演の吉永小百合を初め、浜田光夫や東野英治郎、杉山徳子などが出演し、優れた演技を披露しています。監督の浦山桐郎をはじめとするスタッフも、強い情熱をもってこの作品を完成させました。この映画は、今後も日本映画史に残る名作として語り継がれ、観客の心に深く刻まれることでしょう。

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