キルクス

古代ローマの戦車競技場：キルクス

キルクス（ラテン語: Circus）は、古代ローマにおいて戦車競走を行うために造られた競技場です。日本語では単に「競技場」と訳されることもありますが、現代の競技場との混同を避けるため、「戦車競技場」と訳されることが一般的です。キルクスはローマ市民にとって重要な娯楽施設であり、戦車競走の他、様々な催しが開催されました。

キルクスの概要

キルクスは、古代ギリシアのヒッポドロームと同様の目的で使用されましたが、その構造や用途にはいくつかの違いがありました。ヒッポドロームが主に戦車競走と競馬に限定されていたのに対し、キルクスでは戦車競走や競馬に加え、帝国の重要な記念式典なども行われました。また、専用のナウマキア（模擬海戦会場）が建設されるまでは、キルクスに水を張り模擬海戦を上演することもあったそうです。キルクスは、ローマ劇場やアンフィテアトルム（円形闘技場）と並び、ローマ市民に大変人気のある娯楽施設でした。

キルクスの建築

キルクスの中心となるのは、周回走路です。この走路は、長辺方向に対向する直線コースが、スピナと呼ばれる分離帯で区切られています。スピナは競技場の全長のおよそ3分の2ほどの長さがあり、両端にはメタエという折り返し標柱が設けられています。競技者はこのメタエの外側を回って走行しました。

長辺方向の一方の端は半円形の壁になっており、もう片方は直線状の壁で、通常はここにスターティングゲートであるカルケレスが設置されていました。メタエには、円錐状の柱が建てられているのが一般的でした。

スピナには、当初は何も置かれていませんでしたが、時代が下るにつれてオベリスクや記念円柱、彫像などで飾られるようになりました。また、レースの周回数を知らせるための装置も設置されていました。初期には7個の金色の「イルカ」像が並べられ、戦車が1周するごとにイルカが下向きに回転し、口から水を吐き出す仕組みになっていました。時代によっては、イルカではなく7個の金色の「卵」が使用され、水槽に落としていくことで周回数を示していました。

周回走路の外側には、階段状の観客席が設けられていました。観客席の一部には貴賓席が設けられることもありました。多数の観客を円滑に誘導するため、建物の周囲には多数の入口となるアーチ門が設けられ、建物内の通路や階段を通って、観客がそれぞれの席にたどり着けるようになっていました。観客席は身分によって区別されており、最前列に近い席から元老院議員、騎士階級、ローマ市民などが着席し、後方には庶民が座っていました。

キルクスと似た形状の施設として、スタディアム（Stadium）と呼ばれる、より小規模な競技場もありました。スタディアムは主に古代ギリシアを起源とする運動競技に使用され、ローマにあるドミティアヌス競技場（現在のナヴォーナ広場）がその一例です。

主な戦車競技場

ローマ市
キルクス・マクシムス
マクセンティウスの競技場

コンスタンティノポリス
コンスタンティノープル競馬場

エメリタ・アウグスタ（現 メリダ）
キルクス・マクシムス

カルタゴ
カルタゴの競技場

参考文献

これらの記述は、以下の参考文献に基づいて作成されました。
（参考文献リストは、必要に応じて追記してください）

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