模擬海戦

模擬海戦：古代ローマから現代まで

模擬海戦（もぎかいせん）とは、歴史上の有名な海戦を再現するイベントです。特に古代ローマでは「ナウマキア (naumachia)」と呼ばれ、円形闘技場に水を張り、大規模な興行として行われました。この言葉は、ギリシャ語で海戦を意味する言葉に由来します。

古代ローマにおける模擬海戦

記録に残る最初の模擬海戦は、紀元前46年にユリウス・カエサルがカンプス・マルティウスに建設した人工湖で行われた、ティルス船とエジプト船の戦いです。その後、アウグストゥス帝は、マルス・ウルトル神殿への奉納行事として、カエサル庭園の池でアテナイとペルシャの海戦を再現しました。この時使用された人工池は、長径約550m、短径約370mにも及び、マルティニャーノ湖から水を引いていたとされています。この水は飲料水には不向きであり、模擬海戦のために特別な水道が建設されたと考えられています。

ティトゥス帝の時代には、同じ人工池でコリントスとケルキラの海戦が再現されました。また、クラウディウス帝は、フチーノ湖でロードス軍とシシリア軍に扮した19,000人の剣闘士や罪人を使った模擬海戦を行いました。ドミティアヌス帝も模擬海戦に熱心で、ティベレ川近くの人工湖でほぼ実物大の船を使用しました。トラヤヌス帝も専用の模擬海戦場を所有していたと伝えられています。これらの模擬海戦では、蚊の発生を防ぐため、毎回水を入れ替え、終了後に排水していたようです。

古代ローマ以降の模擬海戦

古代ローマ時代以降も、模擬海戦は様々な形で行われてきました。1559年には、フランス王アンリ2世がルーアンで、1807年には、ナポレオンがミラノで大規模な円形劇場を建設し、模擬海戦を開催しました。18〜19世紀のイギリスでは、模型船を用いた模擬海戦が盛んに行われ、スカーブラのピーザム・パークでは、20世紀初頭から夏期のイベントとして模型船による模擬海戦ショーが開催されています。

2009年には、アメリカ人アーティストのデューク・ライリーが、クィーンズ美術館の企画展で「Those About to Die, Salute You」と題する模擬海戦イベントを開催しました。彼は古代ローマ風の船を制作し、ニューヨーク万国博覧会で使用されたプールを会場に、美術館員らが兵士に扮し、フランスパンとトマトを武器に戦いました。

関連情報

ゲオルク・ヴィルヘルム (ブランデンブルク＝バイロイト辺境伯)：イギリス滞在中に海軍に興味を持ち、自身の領地に人工湖を造って模擬海戦を行いました。
3D Colosseum Naumachia：アルゼンチンの3Dアーティストによるコロッセウムのナウマキア想像図。
* Naval Battle 1962：イギリスのピーザム・パークで定期的に開催されている模擬海戦の1962年の映像。

このように、模擬海戦は古代から現代に至るまで、様々な形で人々に楽しまれてきました。古代ローマの壮大なスケールから、現代アートのユニークな表現まで、その歴史は多様で興味深いものです。

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