キル・エム・オール

メタリカ - キル・エム・オール：スラッシュメタルの原点

『キル・エム・オール』（Kill 'Em All）は、アメリカのヘヴィメタルバンド、メタリカが1983年に発表したデビューアルバムです。当時は大きな商業的成功を収めたわけではありませんが、その革新的な音楽性は、後にスラッシュメタルというジャンルを確立する上で重要な役割を果たし、再評価されることとなりました。日本盤が1984年に発売された際には、ジャケットのイメージから『血染めの鉄鎚（ハンマー）』という邦題が付けられていました。

制作の背景

アルバム制作前、メタリカはメンバーチェンジを経験しています。ロン・マクガヴニー（ベース）の脱退後、クリフ・バートンが加入。さらに、デイヴ・ムステイン（リードギター）が解雇され、カーク・ハメットが加入しました。本作に収録されている楽曲の多くは、以前にデモとしてレコーディングされていたものを再録したもので、デイヴが作曲に関わった楽曲も4曲含まれています。クリフは、ベース・ソロをフィーチャーしたインストゥルメンタル曲「(Anesthesia)Pulling Teeth」を作曲。カークは本作では作曲には参加していません。

「The Four Horsemen」は、元々はセックスをテーマにした「Mechanix」という曲でしたが、アルバムのレコーディングにあたり、ヨハネの黙示録に登場する四騎士を題材とした歌詞に変更されました。また、楽曲構成も中間部が追加され、「Mechanix」よりも長くなっています。

デイヴ・ムステインは、メタリカ脱退後にメガデスを結成し、自身が作曲に関わった「Mechanix」を、メタリカのバージョンとは異なるアレンジでメガデスのデビューアルバム『キリング・イズ・マイ・ビジネス』（1985年）に収録しました。メタリカの伝説的なデモテープ『ノー・ライフ・ティル・レザー』では、「Mechanix」のオリジナルバージョンを聴くことができます。

メタリカの「The Four Horsemen」のイントロリフは、ブリッジミュートを用いたオルタネイトピッキングで演奏されます。一方、メガデスの「Mechanix」ではミュートは用いられず、ピッキングもダウンピッキング→プリングという奏法が用いられています。ジェイムズとデイヴがギターを演奏している『ノー・ライフ・ティル・レザー』収録の「Mechanix」では、この2つの奏法が使い分けられています。

評価

『キル・エム・オール』は、ローリング・ストーン誌が選ぶオールタイム・ベスト・デビュー・アルバム100において、54位にランクインしています。

ボーナストラック

CD化の際、ダイアモンド・ヘッドのカバー「Am I Evil?」と、ブリッツクリーグのカバー「Blitzkrieg」が追加収録されました。これらの楽曲は元々、EP「Creeping Death」に収録されていたものです。しかし、1992年の再発CDではこれらの2曲は外され、その後1998年発表のカバーアルバム『ガレージ・インク』に収録されました。

収録曲

1. ヒット・ザ・ライツ - Hit the Lights
2. ザ・フォー・ホースメン（電撃の騎士） - The Four Horsemen
3. モーターブレス - Motorbreath
4. ジャンプ・イン・ザ・ファイアー（炎のジャンプ） - Jump in the Fire
5. （アネージア）プリング・ティース - (Anesthesia)Pulling Teeth
6. ウィップラッシュ（鞭） - Whiplash
7. ファントム・ロード - Phantom Lord
8. ノー・リモース （懺悔無用）- No Remorse
9. シーク・アンド・デストロイ（見つけて壊せ） - Seek & Destroy
10. メタル・ミリティア（メタル軍団） - Metal Militia

（）は1984年当時の邦題。

演奏メンバー

ジェイムズ・ヘットフィールド（ボーカル、ギター）
カーク・ハメット（ギター）
クリフ・バートン（ベース）
ラーズ・ウルリッヒ（ドラムス）

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