キングスポイント

キングスポイント（1977年5月1日 - 1984年4月8日）は、日本の競走馬界にその名を刻んだ、伝説的名馬テンポイントの全弟として知られています。その華麗なる経歴と、悲運の最期は多くの競馬ファンの記憶に深く刻まれています。

キングスポイントは、デビュー当初から兄の影を強く感じさせながら、競走生活を始めました。名馬の弟という肩書きは大きな期待と同時に、並々ならぬ重圧をもたらしました。栗東トレーニングセンターの小川佐助厩舎に入厩。兄テンポイントを手掛けた山田幸守が担当厩務員となり、その調教の様子は常にメディアの注目を集めました。

1979年11月11日、阪神開催の新馬戦でデビューを果たします。兄の主戦騎手であった鹿戸明騎手が手綱を取り、1番人気に支持されましたが、結果は3着。その後も入着を繰り返すものの、平地競走では1勝に終わりました。平地競走での成績に限界を感じた陣営は、キングスポイントを障害競走に転向させる決断を下します。

転向後、鞍上には当時障害競走で頭角を現し始めていた若手騎手、小島貞博騎手が選ばれました。鹿戸騎手と小島騎手は北海道出身という共通点から親交があり、鹿戸騎手から小川調教師へ、キングスポイントの気性の難しさにも対応できる人材として小島騎手が推薦されたのです。しかし、キングスポイントは障害飛越においても難しさを見せ、飛越拒否や斜飛を繰り返すなど、小島騎手を苦しめました。最初の転向試験では、障害を避けて落馬し不合格という結果に終わっています。

それでもキングスポイントは1980年12月14日、障害未勝利戦で障害馬として再出発。3番人気ながら、小島騎手の巧みな騎乗で1着となり、障害競走での初勝利を挙げます。その後も飛越や着地に危うさを感じさせながらも成長を続け、1981年2月には阪神障害ステークス（春）をレコードタイムで制覇。重賞初勝利を飾りました。続く障害ステークスでも圧勝し、5連勝を達成します。しかし、左前脚に骨瘤を生じ休養を余儀なくされ、秋に復帰。2戦を2着とした後、阪神障害ステークス（秋）を制し、再び連勝街道を歩み始めます。

1982年4月、障害競走の最高峰、中山大障害（春）に挑みます。圧倒的な1番人気に応え、大差で圧勝。小島騎手はキングスポイントの能力について「普段は不器用な馬だが、勝負になると別人になる。跳びの大きさが他の馬とは全く違い、跳ぶたびに他馬を突き放していく」と語っています。

中山大障害制覇後、休養を経て秋には連覇を目指しましたが、一般戦では重い斤量を課せられるため、平地の重賞である京都大賞典から復帰しました。このレースでは約2年ぶりに鹿戸騎手が騎乗しましたが、10着と大敗。続く天皇賞（秋）でも8着と振るいませんでした。再び障害競走に戻り、オープン戦を勝利したのち、中山大障害（秋）に出走。1番人気に応え、2着に8馬身差をつける圧勝で春秋連覇を達成しました。

その後、左膝を骨折し長期休養。復帰後もオープン戦を勝利するなど健闘を見せますが、中山大障害（秋）では4着に終わります。さらに内臓疾患により再び休養。3月のオープン戦で復帰、勝利を収めた後、1984年4月8日、中山大障害（春）に出走します。1番人気に支持されましたが、競走中の水濠障害で右前脚を骨折。予後不良と診断され、安楽死の措置が取られました。兄テンポイントも競走中の事故による骨折が原因で亡くなっており、キングスポイントの死は多くのファンに深い悲しみを与えました。

キングスポイントの競走生活は短く、そして波瀾万丈でした。しかし、その輝かしい勝利と、悲運の最期は、多くの競馬ファンに感動と惜別の思いを残し、今もなお語り継がれる伝説となっています。その短い生涯は、競走馬としての才能と、そして運命の残酷さを物語るものです。

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