キーシュのオタマーン

キーシュのオタマーン：ウクライナ・コサックの首長

キーシュのオタマーン（ウクライナ語: Кошови́й отама́н）は、ウクライナ・コサックにおけるコサック軍の長官、およびその称号です。特に、ザポロージャのシーチとドナウ川のシーチという軍事的組織において、16世紀から19世紀にかけて重要な役割を果たしました。

選挙による選出と権限

キーシュのオタマーンは、シーチに所属するコサック全体の会議（військова Рада）での普通選挙によって選ばれていました。しかし、その任期はわずか1年という短いものでした。戦時においては無制限の権力を有していましたが、平時には他のコサック長官や議会と協議しながら、コサックの内政および外交を司りました。彼の権力の象徴は、鉄の鎚矛（ブラヴァー）でした。

義務と役割

キーシュのオタマーンの主な義務は以下の通りです。

シーチの総合議会の開催
長官会議での議長としての役割
他国勢力との外交交渉
戦利品、税金、領地、牧場、狩猟場、漁場などの公平な分配

また、コサック議会の指名に基づき、軍の書記官、軍の裁判官、軍の取締役といった政府の長官を任命しました。さらに、地域の長官、聖職者、雑務長官、太鼓役、通訳、度量衡役、砲兵長などを専決で任命する権限も持っていました。最高裁判官として、軍の裁判官が出した判決を執行する義務も負っていました。

キーシュのオタマーンがシーチを不在にする際には、任命されたオタマーンが留守を預かりました。

ヘーチマンとの関係

16世紀から17世紀半ばにかけて、キーシュのオタマーンに選出された人物が「ヘーチマン」を自称することがありました。しかし、1649年以降にヘーチマン国家が成立すると、ヘーチマンは国家元首としてウクライナ・コサック全体の長となり、キーシュのオタマーンはシーチに所属するコサックのみの長という区別が明確になりました。

起源の謎

18世紀以前のシーチの古文書が現存していないため、キーシュのオタマーンの起源については不明な点が多く残されています。

参考文献

（ウクライナ語）Довідник з історії України. За ред. І. Підкови та Р. Шуста. — Київ: Генеза, 1993.
（英語）キーシュのオタマーン（ウクライナ百科辞典)

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