キ83 (航空機)

キ83について

キ83は、第二次世界大戦中に大日本帝国陸軍のために設計された試作戦闘機で、三菱重工業が開発を担当しました。この機体は、日本陸海軍機としては史上最高速を誇るとされ、生産前に戦争が終結してしまいました。

開発背景

太平洋戦争が始まる以前に日中戦争が発生し、日本軍の爆撃機は敵国の航空機による激しい迎撃を受け、多大な損失を出していました。特に、爆撃機を護衛するための遠距離戦闘機の必要性が強調され、長い航続距離を持つ戦闘機の開発が急務とされていました。このような要求に応えるため、陸軍は1941年に三菱に対して新たな長距離戦闘機の設計を依頼しました。

当初の要望では、複座の機体において、前後に武装を備え、650km/hの最大速度を目指すことが求められていました。この頃、三菱は新型エンジンを選定し、爆撃機の護衛を最重要視した設計に着手しました。しかし、設計過程で陸軍の要求が変わり続け、仕様の確定が遅延してしまいました。

設計と仕様

1943年には、最終的にエンジンや武装の仕様が固まらず、特に運動性や索敵視界の向上が求められた結果、機体の小型化や武装の変更が幾度となく議論されました。また、海軍との共同開発が始まったため、さらに複雑な要望が追加されました。

1944年には試作1号機が完成し、各務原飛行場での性能試験に備えました。試験では、高翼面荷重にもかかわらず扱いやすい操縦性を示し、高速での性能も発揮しました。高度8,000mでの速度は686.2km/hに達しましたが、当初の目標には及びませんでした。特に、排気タービンによるエンジントラブルが少なかったものの、エンジン振動が指摘されました。

戦争の影響

戦局が厳しくなる中、生産能力はおおむね迎撃機に振り向けられ、キ83は生産に至りませんでした。最終的に試作機只一台が残り、終戦時にアメリカ軍に接収されます。この接収機は、アメリカ製の燃料を使って性能試験が行われ、高度7,000mにおいて762km/hの速度を記録しました。この数値は既存機体の記録を超えるものであったものの、西側の評価基準には適合せず、機体の運命は焼却処分となってしまいました。

構造と技術

設計主務者の久保技師は、流線形の重要性を訴え、科学的な計算を重視しました。キ83は中翼単葉の双発機で、翼は全金属製であり、層流翼形が採用されています。降着装置は引き込み式で、強力な衝撃を受け止められる設計が施されていました。

また、防弾のための装備も充実しており、連続した窓や厳重な構造で操縦者を守る工夫がされていました。機首にはホ155-I口径30mm機関砲、ホ5口径20mm機関砲が備えられ、主武装は機首に集中していました。

派生形と計画の行く末

キ83は複数の派生計画が存在しましたが、実際に運用されることはなく、長期にわたる戦争の影響によってその運命は閉じられました。将来の可能性を秘めた設計でありながら、その夢は実現することなく消えていきました。

結論

キ83は、歴史的な観点から見ても重要な役割を果たした試作機であり、その風貌や技術は後の航空機設計に影響を与えたとも考えられます。尽きせぬその可能性を持ちながら、戦争の影響を受け続けた歴史の一部となりました。

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