ギブソン・サンダーバード

サンダーバード（Gibson Thunderbird）

サンダーバードはギブソン社が製造するエレクトリックベースで、特異なデザインと音色が多くのミュージシャンに親しまれています。この楽器の背景には、アメリカの自動車デザイン界の巨匠、レイモンド・ディートリックが関与しており、彼の影響を受けたユニークなスタイルが確立されました。サンダーバードの名前は、アメリカン・インディアンの伝承に登場する巨大な鳥に由来しています。

1960年代において、エレクトリックベース市場ではフェンダーのプレシジョンベースが圧倒的なシェアを誇っていました。ギブソンも競争に立ち向かうため、EB-0やEB-3といったモデルをリリースし、技術を蓄積してきました。サンダーバードは1963年にファイヤーバードとの同時発表で登場し、その革新的なデザインは多くの注目を集めました。

デザイン構造と変遷

サンダーバードの大きな特徴は、34インチのロングスケールと、独特のボディシェイプです。初期モデルにはシングルピックアップのサンダーバードIIと、ツインピックアップのサンダーバードIVがありました。ネック部分はリッケンバッカーと同様のスルーネック構造で、初期のボディシェイプは低音弦側の角が短いリバースモデルでした。

しかし、1965年には生産コストを削減するために、スルーネックからセットネックに変更され、ボディシェイプもノンリバースモデルに進化しました。ノンリバースモデルは1966年から1969年までの短期間しか製造されなかったため、希少価値がつき、現在では高値で取引されています。また、デザイン変更はフェンダーとの訴訟に関連しているとの噂がありますが、実際にはその証拠は示されていません。

1976年には建国200周年を記念したモデルが登場し、その後もサンダーバードIVは1987年から再生産され続けています。ギブソンでは様々なモデルを展開し、音楽シーンにおける存在感を失わずにきています。

特徴

サンダーバードの音響特性は、パッシブハムバッカーピックアップによる深く力強い低音が特徴であり、ハードロック系のミュージシャンに愛されてきました。しかし、高音域が出にくいため、スラップ奏法には不向きです。また、重量バランスが悪く、ネック側の重量感から「ダイブ」と呼ばれる現象が起こることもあります。このため、演奏中にはある程度の調整が求められます。

主な使用者

サンダーバードは多くの著名なベーシストに使用されています。その中には、モトリー・クルーのニッキー・シックスや、クリス・ノヴォセリック、ジョン・エントウィッスル等が名を連ねており、彼らがこの楽器の特性を引き出す演奏を行っています。

また、ニッキー・シックスの要請に応じて作られたブラックバードモデル（2000年から2003年製造）は、指板にエヴォニー材が使われ、独特のデザインが施されています。トーン調整ではなく、電源のON-OFFスイッチのみに特化したスタイルが特徴的です。

まとめ

サンダーバードは、その独特なデザインと深い音色により、今なお多くのミュージシャンの支持を集めている名器です。新旧問わず多様なモデルが展開されており、音楽シーンでの存在感を際立たせています。ギブソン社は今後もサンダーバードシリーズの伝統を引き継ぎながら新しい時代に対応していくことでしょう。

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