ギャラントマン

ギャラントマン：黄金世代の勇者と、その栄光と影

ギャラントマン（Gallant Man）は、アメリカを代表する競走馬にして種牡馬である。1957年生まれの同世代には、後のアメリカ競馬史に名を刻む強豪たちが名を連ねており、「黄金世代」と呼ばれた時代を象徴する存在だった。

その血統は壮麗だ。父は凱旋門賞優勝馬ミゴリ、母はアイリッシュオークスを制した名牝マジデー。ボワルセル系の血を引くミゴリは、日本の名馬シンザンと同じ系統に属する。幼少期にはラルフ・ロウに買い取られ、「勇者」を意味するギャラントマンと名付けられた。

2歳、3歳時は期待通りの活躍とはいかず、勝ち負けを繰り返す日々が続いた。しかし、ハイビスカスステークスを制覇したのをきっかけに、才能が開花。ボールドルーラーやキングハイランといった強豪を相手に善戦し、ウッドメモリアルステークスでボールドルーラーに次ぐ2着に入るなど、頭角を現し始めた。

そして迎えたケンタッキーダービー。主戦騎手チョケッテの騎乗停止により、名手ウィリー・シューメーカーを鞍上に迎えてレースに臨んだギャラントマンは、ラウンドテーブル、ボールドルーラーに次ぐ3番人気に支持された。レースでは一度は先頭に立ったものの、シューメーカーのゴール板見誤りという信じられないミスにより、アイアンリージにハナ差及ばず2着に終わった。この出来事、そしてロウが前日に見た「ギャラントマンの敗北」という予知夢は、「悪魔のケンタッキーダービー」として語り継がれることとなる。

ケンタッキーダービーの疲労からプリークネスステークスを回避したギャラントマンは、ピーターパンハンデキャップをレコードで圧勝。そして、三冠最終戦のベルモントステークスへ。プリークネスステークスを制したボールドルーラーら強豪を相手に、8馬身差という圧倒的な強さで優勝。アメリカレコードを樹立したこの勝利は、ギャラントマンの真価を示すものだった。続くトラヴァーズステークス、ジョッキークラブゴールドカップでも快勝し、その名を不動のものとした。

年末のトレントンハンデキャップでは、ギャラントマン、ボールドルーラー、ラウンドテーブルの三強が激突。それまで最強と目されていたギャラントマンは、ボールドルーラーに敗れ、米最優秀3歳牡馬の称号を逃した。

翌年もボールドルーラーとの対戦は続き、カーターハンデキャップでは再び敗れたものの、メトロポリタンハンデキャップで雪辱を果たし、2馬身差で勝利した。ハリウッドゴールドカップハンデキャップ、サンセットハンデキャップと連勝を重ねたものの、シスオンバイハンデキャップ5着を最後に故障により引退した。

引退後は、史上最高額でスペンドスリフトファームに売却され、種牡馬となった。しかし、種牡馬としての成績は低調。ギャラントブルーム、ギャラントロメオといった産駒を残したものの、その活躍は限られていた。それでも、彼の血を受け継いだ馬たちは日本でも活躍を見せ、スプリンターズステークス連覇のメイワキミコや、朝日杯3歳ステークス優勝馬ギャラントダンサーなどがその名を挙げた。

種牡馬を引退後もスペンドスリフトファームで余生を過ごし、1988年9月7日、34歳で老衰により死亡した。その遺体は、ファームに埋葬されている。現在では、彼の直系子孫はほとんど残っておらず、その血脈は薄れつつある。ギャラントマンの伝説は、競馬史に深く刻まれたまま、人々の記憶の中に生き続ける。

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