スペンドスリフトファーム

スペンドスリフトファーム：サラブレッド競走馬の歴史を刻む名門牧場

ケンタッキー州レキシントンに位置するスペンドスリフトファームは、アメリカを代表するサラブレッド競走馬の生産と種牡馬繋養を行う牧場です。1937年、レスリー・コムズ2世によって設立され、その歴史はアメリカ競馬界に多大な影響を与えてきました。牧場名は、コムズの曾祖父が所有していた名馬スペンドスリフトに由来しています。

輝かしい歴史と巨額投資

設立当初は127エーカーの敷地でしたが、その後、コムズは積極的に土地を拡張し、全盛期には約4000エーカーもの広大な土地を所有するまでに成長しました。その発展に大きく貢献したのが、1955年に当時の最高額で落札した名馬ナシュアです。ナシュアは種牡馬としても成功を収め、コムズはキーンランド・セール・ジュライセールで大きな存在感を示すようになります。

ナシュア以外にも、レイズアネイティヴやイクスクルーシヴネイティヴなど、数々の成功種牡馬を繋養。ケンタッキーダービー馬を9頭も輩出するなど、アメリカ競馬界に大きな足跡を残しました。しかし、高額落札後も期待に応えられなかったギャラントマンのように、成功を収められなかった種牡馬も存在したことも事実です。

スペンドスリフトファームには、種牡馬施設の近くにナシュア像を中心とした墓地（通称：ナシュアモーテル）と、ライオンの彫像に囲まれた墓地（通称：ライオンズサークル）の2つがあります。ライオンズサークルは、かつてのオールドケニーファームの墓地であり、スペンドスリフトファームの拡大の歴史を示す象徴的な場所となっています。

栄光と転落、そして再生

1977年に株式会社化、1983年には株式公開を行い、1980年代初頭には2頭のアメリカ三冠馬を繋養するなど、スペンドスリフトファームは絶頂期を迎えました。1984年にはエリザベス2世も視察に訪れるなど、その名声は世界へと広がっていきました。

しかし、栄華は長くは続きませんでした。経営は徐々に悪化し、1985年にはシアトルスルーなどの繋養馬を売却する事態に。そして、まもなく倒産という憂き目に遭います。1994年には、残っていた土地の多くを売却し、現在の規模へと縮小されました。

その後、所有権は幾度となく変わりましたが、2004年にパブリックストレージ創業者のウェイン・ヒューズによって買収されます。ヒューズは、自身の生産馬であるマリブムーンやイントゥミスチーフの成功を機に、牧場の規模を再び拡大し始めました。

スペンドスリフトファームの功績

スペンドスリフトファームは、数々の名馬を生産・繋養し、アメリカ競馬界に多大な貢献を果たしてきました。主な生産馬には、1968年アメリカ二冠馬のマジェスティックプリンスや、種牡馬として大成功を収めたミスタープロスペクターなどがいます。

また、繋養した種牡馬も実に華々しい顔ぶれです。ナシュア、レイズアネイティヴ、イクスクルーシヴネイティヴ、そして近年ではInto Mischief、Authenticなど、数々の名馬がここで繋養され、その血統は現代競馬にも大きな影響を与え続けています。

現在も種牡馬の繋養を中心に運営されているスペンドスリフトファーム。その歴史と伝統は、これからもアメリカ競馬界を支え続けるでしょう。

参考文献

* Etched in Stone : Thoroughbred memorials [p60-61]（2000 著者: Lucy Zeh、 出版: ブラッドホース出版局 ISBN 1-58150-023-8）

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