ギャングエイジ

ギャングエイジ：仲間と友情、そして自立への道

9歳前後の子どもの発達段階において見られる「ギャングエイジ」とは、同性の仲間集団を重視する時期のことです。それ以前の幼少期には、男女混合で不安定な友人関係が一般的ですが、小学校中学年頃になると、4～5人の同性グループ（ギャング集団）を形成し、強い仲間意識を持つようになります。

この集団は閉鎖的で、外部の人間を排斥する傾向があります。集団内にはリーダーが存在し、独自のルールや秘密、あだ名などが生まれ、仲間意識を強化します。子どもたちは、保護者との約束よりも仲間との約束を優先するようになり、集団からの承認や拒否が、人格形成や行動に大きな影響を与えます。集団内では、平等な関係と自主的なルール遵守が見られますが、同時に、競争や対立も存在します。

ギャングエイジの特徴:

同性間の閉鎖的な集団形成
集団内での独自のルールや秘密、あだ名
集団への忠誠心と集団基準への適合
集団からの承認や拒否への高い感受性
保護者よりも仲間を優先する傾向
表面的な喧嘩の減少、集団内での競争の増加

ギャングエイジの終焉とその後:

小学校高学年になると、集団は趣味や性別の違いによって小さくなり、排他性や教師への反抗も強まります。しかし、集団の維持やギャングエイジの継続には個人差が大きく、幼い集団では、中学生になってもその傾向が見られる場合があります。中学生になると、関心の対象が内面の世界に移り変わり、ギャングエイジの特徴は徐々に薄れていきます。集団での反抗や自立経験を経て、個人の反抗と自立が始まります。一方で、不良少年集団は遅れてギャングエイジが始まったとも解釈できます。

ギャングエイジを経て、友人関係は「チャムグループ」や「ピアグループ」といったより広範で多様な形へと変化します。同性集団、同性個人、異性集団、異性個人といった多様な関係性が築かれるようになります。

現代社会におけるギャングエイジ:

現代社会では、ビデオゲームの普及や学習塾・習い事の増加、防犯対策の強化などにより、子どもたちが自由に遊べる時間や空間が減少傾向にあります。そのため、ギャングエイジを経験せずに中学生となり、チャムグループを形成する子どももいます。この場合、行動を通じた集団一体感を経験していないことが、いじめや排斥といった問題につながる可能性があります。

「ギャング」の意味:

「ギャング」は、仲間や集団を意味する言葉で、犯罪者集団を指す言葉ではありません。かつては「徒党」と訳されていましたが、現在では「徒党」という言葉自体がほとんど使われなくなっています。「ギャングエイジ」を正確に訳せば「仲間時代」または「大人への旅立ち時代」となります。しかし、犯罪者集団を指す「ギャングスター」と混同され、誤解される場合があります。

教育心理学における意義:

ギャングエイジは、子どもの社会性発達における重要な段階です。集団の中で仲間意識を育み、集団のルールや規範を学び、自立への第一歩を踏み出します。しかし、同時に、排他性や反社会的な行動が現れる可能性もあります。そのため、教育現場では、子どもの社会性発達を適切に支援することが重要です。子どもの集団行動への理解を深め、適切な指導を行うことで、より健全な発達を促すことが期待できます。教師や保護者は、子どもたちの集団生活における葛藤や問題に適切に対応し、健やかな成長をサポートしていく必要があります。

参考文献:

梅津耕作・大久保康彦・大島貞夫・袴田明『教育心理学入門―臨床心理学的アプローチ―』サイエンス社、1989年
鎌原雅彦・竹綱誠一郎『やさしい教育心理学』（第5版）有斐閣、2019年
木村洋太「大学生のチャム・グループ傾向を配慮した学生相談についての一考察」『桜花学園大学学芸学部研究紀要』第9巻、桜花学園大学学芸学部、2017年
柴田義松・宮坂琇子『教育心理学』学文社、2005年
杉江修治 編『教育心理学』学文社、2007年
米澤富士雄・足立正常・倉盛一郎 編『教育心理学』北大路書房、1998年
* 波多野完治・依田新『児童心理学ハンドブック』金子書房、1959年

もう一度検索