依田新

依田新（よだあらた）は、日本の心理学界に多大な貢献をした著名な心理学者です。1905年9月30日、東京市麻布に生まれました。学習院教授であった依田豊を父に持ち、恵まれた環境で育ちました。第八高等学校を経て、1929年には東京帝国大学心理学科を卒業。その後、東京文理科大学助手、東京高等師範学校講師、教授を歴任しました。

1936年には児童学研究会に参加、さらに教育科学研究会教育科学研究部会にも参加し、精力的に研究活動を行いました。しかし、第二次世界大戦下の日本において、学問研究は決して平穏なものではなく、依田新もまた、戦時下の弾圧を経験しています。戦後、1948年には東京文理科大学教授に就任。翌年には校名変更により東京教育大学教授となります。

その後、1951年には名古屋大学教授に就任し、1958年まで東京教育大学教授を併任するなど、複数の大学で教育・研究に携わりました。名古屋大学教育学部学部長も務め、1954年までその職にありました。1956年には東京大学教育学部教授に就任し、1959年まで名古屋大学を併任しました。東京大学教育学部においても、1963年から1965年にかけて学部長を務めています。1966年に東京大学を定年退官後も、日本女子大学教授として教育に尽力し、1968年から1970年までは家政学部長を務めました。さらに1974年には愛知学院大学教授に就任し、1980年に退職しています。

その教育者としての功績は高く評価され、1976年には勲二等瑞宝章を受章。没後には従三位に叙せられました。学術団体においても指導的な役割を担い、日本心理学会理事長を歴任した他、1978年には日本心理学会名誉会員、1982年には日本教育心理学会名誉会員に選出されています。心理学への貢献は計り知れないものがあります。

研究活動においては、教育心理学、児童心理学を中心に、多くの業績を残しています。自ら執筆した著書は『児童観と児童研究』『児童と社会生活』『子供の性格教育』『新心理学』『青年の心理』『新教育と児童心理』『心理学』『心理学入門』『教育心理学入門』『青年心理学』『性格心理学』『人間理解の心理学』など多岐に渡り、その内容は当時の日本の教育・心理学研究に大きな影響を与えました。さらに、共編著も多く手がけており、『性格心理学』『教育心理学』『教育科学小辞典』『教育心理学実験演習』『青年心理学講座』『家族の心理』『児童心理学ハンドブック』『児童心理学』など、教育に携わる人々のための重要なテキストを数多く世に送り出しました。

翻訳においても、アーサー・T・ジャーシルドの『児童の発達とカリキュラム』、A・ゲゼルの『乳幼児と現代の文化 その発達と指導』、アーノルド・ゲゼルの『乳幼児の発達と指導』、G・W・オルポートの『心理学における人間』など、海外の重要な心理学著作を日本語に翻訳し、日本の心理学研究の進展に貢献しました。

また、論文発表も積極的に行い、「児童の定義作用より見たる思考の発達」「心理学に於ける型の問題」「青年期に於ける追憶」「自叙伝の性格学的意味」「類型学」「性格の構成」「智能率の恒常性とその予言的価値について」「直観像素質とその教育的意義について」「ヱルナーの発達心理学と児童学」など、多様なテーマについて研究成果を発表しました。これらの研究は、日本の教育心理学、児童心理学の発展に大きな足跡を残しています。

依田新の長男である依田明氏もまた心理学者の道を歩み、父の後を継いで心理学の発展に貢献しています。依田新の生涯は、日本の心理学、特に教育心理学と児童心理学の発展に大きく寄与した、輝かしいものでした。その業績は、現代においても高く評価され、多くの研究者や教育関係者に影響を与え続けています。

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