ギュスターヴ・エミール・ボアソナード

ギュスターヴ・エミール・ボアソナード・ド・フォンタラビー：日本近代法の父

ギュスターヴ・エミール・ボアソナード・ド・フォンタラビー (1825年6月7日-1910年6月27日) は、フランスを代表する法学者であり、教育者です。彼は近代日本の法制度確立に重要な役割を果たした人物として、「日本近代法の父」と称されています。

生い立ちと学歴

フランスのヴァル＝ド＝マルヌ県ヴァンセンヌに生まれました。彼の父はパリ大学教授を務めた著名な古典学者でした。ボアソナード自身もパリ大学を卒業、同大学院を修了し、その後グルノーブル大学、パリ大学で教鞭を執るなど、輝かしいキャリアを積みました。

明治日本の法整備への貢献

1873年、明治政府の要請を受け、来日しました。来日後は、司法省明法寮（後の司法省法学校）や、東京法学校（現・法政大学）、明治法律学校（現・明治大学）、東京大学などで教鞭をとり、多くの弟子を育成しました。特に、東京法学校では教頭も務め、日本の法学界を牽引する人材育成に貢献しました。

ボアソナードの最大の功績は、近代日本の法典整備です。当時、日本は不平等条約によって列強諸国から不平等な扱いを受けており、その撤廃には近代的な法典の制定が不可欠でした。そこで、明治政府はナポレオン法典をモデルとした法典の整備に着手し、ボアソナードはその中心人物として活躍しました。

彼は、単なる外国法の翻訳ではなく、日本の慣習法などを踏まえた上で、日本の国情に適した法典の制定を主張しました。彼のこの姿勢は、当時の司法卿である大木喬任から大きな信頼を得て、法典整備は順調に進められました。

刑法と民法の制定

まず、刑法典と治罪法典（現在の刑事訴訟法）の起草に取り組みました。江戸時代には各藩が独自の法度を持っていたため、刑罰の統一が急務でした。ボアソナードは、近代刑法の根幹である「罪刑法定主義」を基にした刑法と、刑事訴訟法をフランス語で起草し、それを日本側が翻訳しました。この草案は元老院の審議を経て、明治13年（1880年）に制定、2年後に施行されました。

ボアソナードは、明治初期に行われていた拷問による自白強要を廃止するよう明治政府に強く訴えかけました。お雇い外国人の中で、拷問廃止を訴えたのは彼だけだったと言われています。

続いて、民法典の起草に着手しました。しかし、民法典の制定は、刑法よりも困難を極めました。ナポレオン法典を翻訳した草案が幾度も作成されたものの、大木喬任は日本の実情に即した草案を求めました。ボアソナードは、全国各地の慣習を調査した資料を参考に、日本の実情に合わせた民法典の草案を作成しました。

しかし、完成した民法は、様々な政治的要因により、施行されることなく、修正民法が制定・施行されました。この結果にボアソナードは落胆しましたが、彼の作成した民法草案は、後の民法に大きな影響を与え、現在でもその影響が見られます。

法学教育への貢献

ボアソナードは法学教育にも大きく貢献しました。彼は司法省法学校や明治法律学校、東京大学などで教鞭を執り、多くの法学者を育成しました。彼の講義は、独特のスタイルで知られており、学生たちにとって容易ではなかったと伝えられています。しかし、その講義は日本の法学教育に大きな影響を与えました。

外交への貢献

ボアソナードは国際法にも精通しており、台湾出兵後の北京での交渉にも参加し、条約締結に貢献しました。

晩年と死

1895年に帰国した後、南フランスのアンティーブで余生を過ごし、1910年に同地で亡くなりました。

評価

ボアソナードは、近代日本の法整備に多大な貢献を果たした人物として、現在でも高く評価されています。彼の業績は、日本の法制度や法学教育の基礎を築いたものとして、現在も高く評価されています。彼は日本の法整備だけでなく、法学教育にも多大な貢献をし、多くの弟子を育成しました。彼の功績は、法政大学を始めとする多くの大学に記念施設として残っています。

主要著作

『仏国民法売買篇講義』
『再閲民法草案』
* 『民法商法の実施延期に関する意見』など

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