ギヨーム9世 (ポワティエ伯)

ギヨーム9世：短くも歴史を彩ったポワティエ伯

ギヨーム9世（Guillaume IX de Poitiers, 1153年8月17日 - 1156年）は、12世紀のポワティエ伯であり、その短い生涯は、当時のヨーロッパの政治情勢と深く結びついています。彼は、イングランド王兼アンジュー伯兼ノルマンディー公であったヘンリー2世と、アキテーヌ女公アリエノール・ダキテーヌの間に生まれた長男です。

生誕と背景

ギヨーム9世は、ポワティエの伝統に従い、母方の祖父であるアキテーヌ公ギヨーム10世（ポワティエ伯としてはギヨーム8世）に因んで名付けられました。彼は母からポワティエ伯領の相続人に定められましたが、これは当時のヨーロッパの封建制度における領土継承の重要性を示すものです。彼の誕生時、父ヘンリー2世はイングランド王位をスティーブン王から奪取するため、ノルマンディーからイングランドへ渡航しており不在でした。しかし、ギヨーム9世の誕生日に、奇しくもイングランド王位継承者であったスティーブンの長男ユースタスが急死するという出来事が起こりました。これにより、ヘンリー2世がイングランド王位を継承することがほぼ確実となりました。

短い生涯

翌1154年の春、ヘンリー2世はノルマンディーに戻り、ギヨーム9世と初めて顔を合わせました。同年10月25日にスティーブン王が死去すると、ヘンリー2世は再びイングランドへ渡航し、ギヨーム9世も母アリエノールとともにイングランドへ渡りました。しかし、ギヨーム9世は、1156年にわずか3歳で死去し、レディング修道院に埋葬されました。彼の短い生涯は、同時代の政治的変動と、複雑な王位継承の背景に彩られています。

親族関係

ギヨーム9世には、異父姉としてマリーとアリックス、同父母の兄弟姉妹として若ヘンリー王、リチャード1世、ジェフリー、ジョン、妹にマティルダ、エレノア、ジョーンがいました。特に弟のリチャード1世は、後にイングランド王として歴史に名を残すことになります。

ギヨーム9世の生涯は短く、歴史的な偉業を成し遂げることはありませんでしたが、彼の誕生は父ヘンリー2世のイングランド王位継承を確実にしたという点で、歴史上重要な役割を果たしたと言えるでしょう。また、彼の短い生涯は、中世ヨーロッパの貴族社会における子供たちの運命や、王位継承をめぐる複雑な政治状況を映し出す鏡となっています。

まとめ

ギヨーム9世は、ポワティエ伯としてその名を残していますが、彼の生涯は幼くして終わりを告げました。しかし、彼の誕生は当時のヨーロッパの政治情勢に大きな影響を与え、歴史の転換期における重要な出来事の一つとして記憶されています。

参考文献

桐生操『王妃アリエノール・ダキテーヌ -リチャード獅子王の母-』新書館、1988年。
石井美樹子『王妃エレアノール ふたつの国の王妃となった女』平凡社、1988年。
* レジーヌ・ペルヌー著、福本秀子訳『王妃アリエノール・ダキテーヌ』パピルス、1996年。

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