クイックディスク

クイックディスク (Quick Disk, QD)とは

クイックディスクは、1984年2月にミツミ電機が記憶装置「クイックディスクドライブ」を、日立マクセル（現・マクセル）が記録媒体「簡易型フロッピーディスク Quick Disk (QD2)」を開発・発売した磁気ディスクの一種です。

特徴

フロッピーディスクとは異なり、同心円状のトラックではなく、レコードの溝のように渦巻状のトラックが1本だけ存在します。この構造により、以下の様な特徴がありました。

安価: フロッピーディスクに比べて安価に製造できました。
小型: 3.5インチや3インチのフロッピーディスクよりも小型でした。
高速: 当時の主流であったデータレコーダーと比較して、読み書き速度が高速でした。

しかし、フロッピーディスクの価格が下落したことで、最終的にはコスト面での優位性は失われました。

詳細

ディスクサイズ: 2.8インチ
磁性体: 両面にγ-酸化鉄磁性体を塗布
両面利用: 裏返してセットすることで両面使用可能
ジャケット: 78×78×3mmのプラスチック製。シャッターはなく、紙製のスリーブに入れて保存
ライトプロテクト: ツメを折り取る方式
記録容量: 片面64キロバイト、両面で128キロバイト
最大記録密度: 4410BPI
トラック密度: 59TPI
ディスク回転数: 423rpm
記録方式: MFM

構造上の特徴

通常のフロッピーディスクドライブでは、ディスクの回転とヘッド送りに別々のモーターを使用しますが、クイックディスクドライブでは1つのモーターで両方の動作を行います。この機構が低コスト化に貢献しましたが、ヘッドの位置決め精度が低く、トラック密度を上げられないという欠点もありました。

また、トラックが1本しかないため、シーケンシャルアクセスのみ可能で、ランダムアクセスはできませんでした。DRAMを利用することで擬似的なランダムアクセスを実現する方法もありましたが、速度面で不利がありました。

採用システム

クイックディスクは、様々な機器で採用されました。

パソコン: シャープ MZ-1500（標準搭載）、MZ-700、MZ-2000/2200（外付けドライブ）など
MSX: Logitec、CASIOより外付けドライブがリリース
MIDI機材: ヤマハ、ローランド、コルグ、AKAI、河合楽器製作所の音源ユニット、シンセサイザー、サンプラー、シーケンサー、データファイラなど
日本語ワードプロセッサー: シャープ、カシオ計算機、キヤノンの初期の一部機種（外付けドライブ）
ファミリーコンピュータ ディスクシステム: 任天堂がクイックディスクの形状を変更した「ファミリーコンピュータ ディスクカード」を採用

類似製品

三協精機（現・ニデックインスツルメンツ）が開発した2.5インチフロッピーディスクドライブは、クイックディスクドライブと同様の機構を持ちますが、メディアにはシャッターがあり、同心円のトラックを持つことでランダムアクセスを可能にしています。

記憶容量: 片面64キロバイト、両面で128キロバイト
記録方式: GCR
* 用途: ポケットコンピュータ用の外部記憶装置

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