クイーンダイヤモンド

クイーンダイヤモンド：日本のフェリー史に名を刻んだ一隻

1986年10月、ダイヤモンドフェリーは新たな旗艦「クイーンダイヤモンド」を神戸～松山～大分航路に投入しました。この船は、同社の前身フェリー「フェリーゴールド」の代替として建造されたもので、日本の長距離フェリーにおける新造代替の第一号として、その後のフェリー建造に大きな影響を与えました。

設計と特徴

クイーンダイヤモンドは、従来のフェリーと比較して約2倍の総トン数を誇る大型船でした。2層の車両甲板と3層の居住区を備え、車両積載能力の大幅な向上と旅客設備の充実が図られています。省エネルギー、省力化も設計段階から重視されました。

船体構造は、燃料タンクや機関室を最下層に配置し、車両甲板を上層に配置する効率的な設計です。旅客船室は、特等室から二等室まで多彩に用意され、当時としては画期的な、一人当たり1.4㎡以上の床面積を確保した二等室などもありました。さらに、船体中央部には全デッキを貫通するエレベーターを設置し、バリアフリーにも配慮されています。

車両の搭載は、船首、船尾いずれからも可能な設計になっており、最大50tの車両に対応、有効高さも4.2m～4.4mを確保していました。船首にはバウバイザーと旋回式ランプを備え、船体中央部にはシーソー式ランプ、船尾にもランプを設けていました。Dデッキは自然換気のため両舷に開口部が設けられており、特徴的な船容となっています。

ファンネルは当初は低く、マークもありませんでしたが、就航後に増高され、整風板が追加されました。

豪華な船内設備

クイーンダイヤモンドの最大の特徴は、Bデッキに位置する「ダイヤモンドホール」です。28m×25mという広大な空間は、大型窓から光が差し込み、仕切り壁のない開放的な設計でした。案内所、売店、ゲームコーナー、ラウンジ、レストランが集中配置され、フレキシブルな空間として利用できました。レストランはカフェテリア方式、売店はオープンショップ式でした。

その他、Aデッキには大型窓のある展望大浴場が設置され、航海中は常時開放されていました。

船室は、特等室（洋室）、一等室（洋室）、グリーン席（洋室・和室）、二等和室、指定席（洋室）、団体用二等和室など、様々なタイプが用意されていました。竣工時の定員は965名でした。

その後の航海

2003年4月、関西汽船との共同運航による航路再編に伴い、クイーンダイヤモンドは引退しました。その後、韓国のSea World Express Ferryに売却され、「NEW SEA WORLD EXPRESS」として木浦～済州島航路に就航しました。ダイヤモンドフェリー時代の塗装やイルカのマークはそのまま残されていました。

2008年にはEndeavor Linesに売却され、「PRINCESS T」と改名、中国の造船所で改造を受け、2009年7月にはギリシャへ回航されました。2011年には「VASTERVIK」と改名され、スウェーデンのゴットランドボートへの傭船が予定されていましたが、改装工事の遅延により実現しませんでした。その後、ギリシャのEUROPEAN MANAGEMENT MARITIME COMPANYがピレウス～レシムノン航路での運航を計画しましたが、これも実現せず、現在もギリシャで係船されています。

クイーンダイヤモンドは、日本のフェリー技術の進歩を示す象徴的な船として、そして、長く世界各地を航海した船として、その歴史に深い足跡を残しました。

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