クコ

クコ：薬用と食用を兼ね備えた有用植物

クコ（枸杞、学名: Lycium chinense）は、東アジア原産で、ナス科クコ属に分類される落葉性の低木です。別名として、ゴジベリーやウルフベリーなどでも知られています。荒れ地や河川敷、海岸線など、日当たりの良い場所を好み、人里近くでもよく見かけることができます。

名前と分布

和名である「クコ」は、漢名「枸杞」に由来します。中国の古書には、その名の由来が「枸橘（カラタチ）のような棘と、杞柳（コリヤナギ）のようなしなやかな枝を持つ」と記されています。日本各地（北海道から沖縄まで）、朝鮮半島、中国、台湾などにも広く分布しています。地域によっては、「アマトウガラシ」「オニクコ」など、様々な方言名でも呼ばれています。近年では、英語名のゴジベリーが逆輸入され、園芸分野でも広く用いられるようになりました。

形態と生態

クコは高さ1～2メートルほどの低木で、暖地では半常緑性となります。株元から多数の茎が伸び、弓状に垂れ下がり、やぶ状に繁茂します。枝は細長くしなやかで、1メートル以上に伸びることも。3～4月頃に芽吹き、葉の付け根には1～2センチほどの棘が互生します。葉は長さ2～4センチほどの倒披針形または長楕円形で、厚みがあり柔らかく、表面には毛がありません。葉腋から伸びる細い花柄の先端に、直径約1センチの薄紫色の花を咲かせます。開花期は晩夏から秋（7～11月）です。

果実は液果で、9月頃から結実し、晩秋には橙赤色に熟します。長径は1～2.5センチほどの楕円形で、中には約20個の種子を含みます。種子は2ミリ[[メートル]]弱ほどの大きさで、腎円形や楕円形をしており、淡褐色の種皮には浅い網目模様があります。

クコは丈夫な性質を持ち、乾燥にも比較的強いですが、ハムシやフシダニ、アブラムシの被害やうどんこ病にもかかりやすいため、生育状況には注意が必要です。匍匐茎を伸ばして容易に増殖するため、一度定着すると、数年でまとまった群落を形成することがあります。挿し木でも簡単に繁殖できます。

利用方法

クコは古くから食用や薬用に利用されてきた非常に有用な植物です。葉や果実、根はそれぞれ薬用として、また果実は食用としても利用されます。萌芽力が強いため、庭木や生垣としても利用可能です。

食用としての利用

熟した赤い果実には、ベタイン、ゼアキサンチン、フィサリンなどの成分が含まれ、強壮作用があるとされています。乾燥させたクコの実を使ったクコ酒の他、生食やドライフルーツとして、また薬膳料理の材料としても利用されています。若葉も食用となり、軽く茹でてアク抜きした後に、お浸し、和え物、炒め物など様々な料理に活用されます。採取の適期は、暖地で4～5月、寒冷地で5～6月頃です。

薬用としての利用

クコの果実は「枸杞子（くこし）」、根皮は「地骨皮（じこっぴ）」、葉は「枸杞葉（くこよう）」という生薬名で呼ばれ、それぞれ異なる薬効があるとされています。これら三者は強壮薬として用いられ、単独または組み合わせて利用されます。民間療法では、それぞれを煎じて服用する方法が知られています。しかし、果実は下痢しやすい人には向かず、根皮や葉は冷え症の人には禁忌とされています。また、ワルファリンとの相互作用が報告されているため、併用する際は注意が必要です。

枸杞子には、血圧や血糖値の低下作用、抗脂肪肝作用などがあるとされ、視力減退や腰痛、乾燥性の咳にも効果があるとされています。地骨皮は抗炎症作用や解熱作用、高血圧低下作用があり、漢方方剤にも配合されます。枸杞葉は動脈硬化予防や血圧低下作用があるとされ、クコ茶として親しまれています。

近年では、クコの果実はスーパーフードとしても注目を集め、「食べる目薬」などと呼ばれ商業的に販売されています。しかし、食品素材としての安全性と有効性については、十分なデータが不足しているのが現状です。

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