クサスギカズラ

クサスギカズラ（草杉蔓、学名：Asparagus cochinchinensis）は、キジカクシ科クサスギカズラ属に分類されるつる性の多年草です。その名の通り、スギのような葉を持ち、つる状に茎を伸ばす特徴から「草杉蔓」と呼ばれるようになりました。

分布と生育環境

クサスギカズラは、日本の関東地方南部から沖縄諸島、そして台湾、中国といった温帯から亜熱帯の海辺の砂地に自生しています。海岸近くの砂地を好む植物で、日当たりの良い場所でよく見られます。

形態

草丈は100cmから150cm程度に成長し、短い根茎には紡錘形から円柱形の塊茎が多数形成されます。茎の下部は木質化し、上部はつる状になって他の植物に絡みつきながら成長します。葉の一部はトゲに変化しており、このトゲを使って周囲の植物に絡みつきます。小枝につく葉は退化して鱗片状になっており、光合成は葉のように見える葉状枝と呼ばれる部分で行います。

花と果実

5月から6月頃にかけて、葉腋から淡黄色の小さな花を1～3個ずつ咲かせます。果実は球形をしており、中には黒い種子が1つ入っています。クサスギカズラ属の他の植物とは異なり、果実は白色に熟すのが特徴です。

利用

クサスギカズラの根は、古くから生薬として利用されてきました。日本薬局方にも収載されている生薬「天門冬（てんもんどう）」の基原植物の一つであり、5月頃に根を収穫します。収穫した根は、コルク化した外層の大部分を取り除き、湯通しまたは蒸した後に利用します。良質な天門冬は、根が飴色をしていて太く、長く、甘味が強いとされています。なお、同属の植物であるタチテンモンドウ（Asparagus cochinchinensis var. pygnaeus）は、天門冬としては利用されません。

薬効成分と効果

天門冬には、鎮咳、利尿、滋養強壮などの効果があるとされています。これは、クサスギカズラの根に含まれる成分によるものです。具体的には、アミノ酸の一種であるアスパラギン、サポニンの一種であるアスパラサポニン類、そしてベータ・シトステロールなどが含まれています。これらの成分が、体の不調を整える働きをすると考えられています。これらの薬効から、滋陰降火湯や清肺湯などの漢方薬に配合されています。

まとめ

クサスギカズラは、海岸近くの砂地に生育する特徴的なつる性の植物であり、その根は生薬として貴重な資源です。見た目の特徴と薬効、生息環境などを理解することで、この植物に対する知識を深めることができます。

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