クヌム

クヌム：古代エジプトの創造神とナイルの守護者

クヌムは、古代エジプトで崇拝された創造神の一柱です。その名は、Khnum、Knum、Chnum、Khunemuなど、様々な表記が見られます。フヌムと呼ばれることもあります。エジプト[[神話]]の他の神々、例えばラーよりも古い起源を持つとされ、古代エジプト人の信仰において重要な役割を担っていました。

神の姿と役割

クヌムは、通常、羊の頭を持つ人型の姿で描かれています。この羊は、水平に伸びた角を持つ絶滅種（Ovis longipes palaeoaegyptiacus）と推測されており、中王国時代には既に絶滅していたと考えられています。ラーが冥界を渡る際に牡羊の姿になるという記述は、クヌム信仰の名残りを示唆しているのかもしれません。

クヌムの主要な役割は、人間の創造です。粘土をこねて人間を創造したとされ、この創造神話は、クヌム信仰の中核を成していました。他の神々や万物の創造もクヌムによって行われたと信じられており、唯一の創造神としての地位を確立していました。

同時に、クヌムはナイル川の氾濫を司る神としても崇拝されていました。特に、エレファンティネ（現在のアスワン）では守護神として信仰を集め、南方から押し寄せるナイル川の増水を管理する役割を担っていました。神話は、クヌムがナイル川の水源に張られた結界を破ることで、毎年恒例のナイル川の氾濫をもたらすと説明しています。このことから、ネイトを妻とする神話も存在します。ナイル川の氾濫は、古代エジプトの農業にとって不可欠であったため、クヌムは人々の生活に直結する重要な神であったと言えるでしょう。

クフ王との関連

大ピラミッドの建設で知られるクフ王は、「クヌム・クフ（クヌム神は我を守りたまう）」とも呼ばれていました。この呼び名は、クフ王がクヌム神からの加護を受けていたことを示唆し、王権と神との密接な関係を物語っています。

クヌムと他の創造神

クヌムによる人間創造の神話は、世界各地の神話に見られる創造物語と共通点が見られます。例えば、旧約聖書のアダムは土から作られ、メソポタミア神話ではニンフルサグが粘土から人間を作り、ギルガメシュ叙事詩ではアルルが粘土をこねてエンキドゥを創造しています。ゾロアスター教のガヨーマルトも泥から作られ、中国[[神話]]では女媧が泥をこねて人間を作ったとされています。ギリシア[[神話]]のプロメーテウスも粘土から人間を創造したと伝えられています。これらの神話と比較することで、クヌム神話が持つ普遍性と独自性を理解することができるでしょう。また、ユダヤ教の伝承に登場するゴーレムも、クヌムと同様に粘土から作られた生命体として興味深い対比となります。

まとめ

クヌムは、創造神としての役割とナイル川の守護神としての役割を兼ね備えた、古代エジプトにおける重要な神でした。羊の頭を持つその姿、粘土から人間を創造した物語、そしてナイル川の氾濫を司る力など、クヌム神に関する様々な側面は、古代エジプト文明の信仰体系や自然観を理解する上で重要な手がかりとなります。さらに、世界各地の創造神話との比較検討を通して、クヌム神話の持つ普遍性と独自性を改めて認識することができます。

もう一度検索