クヌーズ4世 (デンマーク王)

クヌーズ4世の生涯：聖王の軌跡

クヌーズ4世（1042年頃 - 1086年7月10日）は、デンマーク王（在位：1080年 - 1086年）であり、「聖王」として知られています。彼は、デンマーク王国の君主制を強化し、ローマ・カトリック教会を熱心に支持した野心的な王でした。

生い立ちと初期の活動

クヌーズは、デンマーク王スヴェン2世と愛妾の間に生まれました。1069年には父王によるイングランド遠征に参加し、1075年にはイングランドへの奇襲作戦を主導したことが記録されています。遠征からの帰路、クヌーズ率いるデンマーク艦隊はフランドルに立ち寄り、イングランド王ウィリアム1世との敵対関係から、フランドルとの同盟を深めました。また、スカルド詩人カールフル・マナソンによると、クヌーズはセンバーとエスターへの遠征も成功させたと言われています。

父王スヴェン2世の死後、クヌーズの兄ハーラル3世が王位を継承しましたが、クヌーズはスウェーデンに亡命し、ハーラル3世に反対する動きをしていたと考えられています。1080年にハーラル3世が亡くなると、クヌーズ4世が王位を継承しました。この際、フランドル伯ロベール1世の娘アデルと結婚し、間に息子シャルル1世、双子の娘セシリアとインゲギアトをもうけました。インゲギアトの子孫であるビェルボ家は、後にスウェーデンやノルウェーの王位を継承し、オーロフ2世はデンマーク王位にもつきました。

デンマーク王としての統治

クヌーズ4世は、即位後すぐにその野心と敬虔さを示しました。教会の権威を強化し、教会の祝日を厳格に守ることを要求しました。彼はダルビー、オーデンセ、ロスキレ、ヴィボーなどの教会、特にルンド教会に多大な寄進を行いました。教会の擁護者として、クヌーズは十分の一税の徴収を強制しようとし、この教会権力の拡大は、クヌーズの権力を支持する強力な同盟者を生み出しました。

1085年、ルンド大聖堂に広大な領地を寄進し、大聖堂付属学校を設立しました。領地の没収は、違法行為を犯した臣下への恩赦の代償として行われました。ルンドの聖職者は、領内の農民に課税や罰金を科す権利を与えられましたが、クヌーズ自身も法を犯した者の赦免や軍役を拒否した臣下への罰金など、王権を維持しました。

クヌーズは、貴族を抑圧し、法を遵守させることで、デンマーク王権の拡大を目指しました。共有地の所有権、難破船の積荷に対する権利、外国人の相続権などを主張する勅令を発行し、解放奴隷や外国人聖職者、商人たちを保護する法律を制定しました。しかし、これらの政策は、王権の強化に慣れていなかった臣下からの不満を招きました。

イングランド王位への野望と挫折

クヌーズの野望は国内に留まらず、彼はイングランド、デンマーク、ノルウェーを統治したクヌーズ大王の大甥として、イングランド王位を自身のものであると主張しました。1085年、義父フランドル伯ロベール1世とノルウェー王オーラヴ3世の支援を受け、イングランド侵攻を計画し、リムフィヨルドに艦隊を招集しました。しかし、神聖ローマ皇帝ハインリヒ4世の脅威のため、艦隊は出航することができませんでした。

また、艦隊の兵士は農民が中心で、収穫期に家に帰る必要があり、長期間の待機に不満を募らせ、クヌーズの弟オーロフを擁立しようとしました。クヌーズはオーロフを逮捕し、フランドルに送還しました。最終的に軍は解散し、農民は収穫に戻りました。

死と列聖

1086年初め、クヌーズが滞在していたヴェンシュセルで農民の反乱が勃発し、クヌーズはオーデンセの聖アルバン修道院に逃れました。しかし、反乱軍は教会に侵入し、祭壇の前でクヌーズと弟ベネディクト、17人の従者を殺害しました。歴史家カンタベリーのエルノスは、クヌーズが槍で脇腹を刺されて死亡したと記しています。

クヌーズの死後、その殉教と教会擁護の姿勢から、すぐに聖人と見なされるようになりました。オーロフの治世中にデンマークは不作に苦しみましたが、これはクヌーズの殺害に対する神の罰であると解釈されました。クヌーズの墓で奇跡が起こったという報告が相次ぎ、列聖の要求が高まりました。1101年4月19日、教皇パスカリス2世はクヌーズ4世の列聖を認め、彼はデンマーク初の聖人となりました。カトリック教会では、7月10日をクヌーズの祝日としています。しかし、スウェーデンとフィンランドでは、クヌーズ4世は1月13日の聖クヌーズの日に結びつけられています。

1300年、クヌーズ4世と弟ベネディクトの遺体は聖クヌーズ大聖堂に埋葬され、現在も公開されています。

遺産と大衆文化への影響

クヌーズの治世は、時代によって異なる解釈がなされてきました。圧政的な王という評価がある一方で、教会を献身的に擁護し、正義のために戦った公正な支配者という評価もあります。彼の聖人としての地位は、デンマーク王室に王権神授説的な雰囲気を与えました。反乱の原因は、1085年の軍役に従わなかった農民への罰金であると推測されています。

ルンド大聖堂への寄進文書は、デンマークにおける最も古い包括的な文書であり、バイキング時代後のデンマーク社会に対する重要な情報を提供しています。この寄進は、父王スヴェン2世の意向に従って、デンマークにルンド大司教区を設立することを目的としていたと考えられ、1104年に実現しました。息子のカールは、シャルル1世としてフランドル伯となり、父と同様に教会で反逆者によって殺害され、後に列福されました。

2008年のX線コンピューター断層撮影の結果、クヌーズは右利きで細身の体型であり、死因は腹部から仙骨への刺し傷であることが判明し、エルノスの記述とは異なっていたことがわかりました。クヌーズに複数の敵と戦ったことを示す外傷がないことは、彼が戦うことなく死に直面したことを裏付ける可能性があります。

スペインの一部では、クヌーズの祝祭日がマリファナ合法化運動の「休日」となっており、クヌーズのスペイン語名「Canuto」がマリファナタバコを意味する言葉であることに関連付けられています。

まとめ

クヌーズ4世は、その野心、敬虔さ、そして悲劇的な最期によって、デンマークの歴史に深い足跡を残した人物です。彼の生涯は、中世デンマークの政治、社会、そして宗教観を理解する上で重要な鍵となります。

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