リムフィヨルド

リムフィヨルド：ユトランド半島を貫く変化に富む海峡

デンマークのユトランド半島北端を南北に伸びるリムフィヨルドは、カテガット海峡と北海を繋ぐ全長約180キロメートルに及ぶ海峡です。その細長く入り組んだ形状は、まるでユトランド半島とヴェンシュセルチュー島を分かつ帯のようです。海峡内にはモース島など複数の島々が点在し、幾つもの橋がこれらの島々と半島を繋いでいます。

リムフィヨルドの西端は北海に面しており、特徴的な砂州の発達が見られます。この砂州は、リムフィヨルドの歴史において重要な役割を果たしてきました。歴史を紐解くと、この海峡は古くから北海とバルト海を繋ぐ穏やかな航路として利用され、11世紀にはクヌーズ2世も通行した記録が残されています。しかし、中世には一時的に閉塞した時期もありました。デンマークの歴史家サクソ・グラマティクスは、13世紀初頭における閉塞を記しています。

その後、19世紀に入ると、嵐による砂州の崩壊と新たな水道の形成が繰り返されました。1825年の嵐でアガ水道が開通し、1862年の嵐ではチュボレン水道が開通するなど、自然の力の大きさを示す出来事が発生しています。アガ水道はその後閉塞しましたが、現在では北のアガ地峡と南のハーボエア地峡という砂州がリムフィヨルドを挟んで伸び、その間にチュボレン水道が開けた状態となっています。

リムフィヨルドは変化に富んだ地形だけでなく、豊かな生態系も特徴です。周辺には塩性湿地、砂地、草地、汽水域のラグーン、ヨシ原、アマモ場など多様な環境が広がり、多くの動植物が生息しています。ハマシギやエリマキシギなどのシギチ類をはじめ、コザクラバシガン、ハイイロガン、シロハラネズミガンといったガン類、オオハクチョウ、コハクチョウ、コブハクチョウなどのハクチョウ類、そしてヒドリガモやオオバンといったカモ類など、様々な水鳥が観察できます。また、ゼニガタアザラシもこの海峡に生息しています。

リムフィヨルドの豊かな自然環境は高く評価されており、アガ地峡・ハーボエア地峡一帯、モース島北東部とレグステアの間の広い水域、そしてオールボー西側のニベ一帯の広い水域の3ヶ所はラムサール条約に登録されています。これらの地域は、国際的に重要な湿地として保全されています。

リムフィヨルドに面した町としては、東部に主要都市オールボー、西部にニュクービンやモースなどがあります。これらの町々は、リムフィヨルドの恵みを受けながら発展を遂げてきました。リムフィヨルドは、歴史、地理、生態系の多様性を併せ持つ、デンマークを代表する海峡と言えるでしょう。

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