クラスノゴルスク (撮影機)

クラスノゴルスク：ソ連が生んだ名機

クラスノゴルスクは、旧ソビエト連邦（現在のロシア）のクラスノゴルスク機械工場（KMZ）で1965年から1991年にかけて製造された16mmフィルムカメラのシリーズです。このカメラは、そのシンプルで堅牢な設計、そして独特の機能性から、アマチュア映画制作者からプロの映像作家まで、幅広い層に支持されました。

歴史と概要

クラスノゴルスクの名前は、製造工場があるモスクワ郊外の工業都市、クラスノゴルスクに由来します。冷戦時代に誕生したこのカメラは、小型映画撮影のニーズに応えるため、手巻きのゼンマイを動力源とするユニークな設計を採用しました。この点は、同じくゼンマイ駆動のベル&ハウエルのフィルモと共通しています。1965年という年は、コダックがスーパー8を、富士フイルムがシングル8を発表した年でもあり、小型映画カメラの黎明期にあたります。

初期モデルのクラスノゴルスク1から、シャッタースピードは8コマ/秒から48コマ/秒まで設定可能で、標準の24コマ/秒設定では、ゼンマイを完全に巻き上げると約25秒（約5m）の撮影が可能でした。コマ撮り機能も搭載されており、アニメーション制作にも利用されました。クラスノゴルスク1と2は、30.5mのフィルムを内蔵したカセットを使用します。外観は、初期モデルの1と2が白、3と4が黒で、3と4には肩当てが付属します。フィルムのパーフォレーション（穴）は、片側でも両側でも使用可能です。

露出計は水銀電池で作動します。特に、クラスノゴルスク3は、1971年から1989年にかけて最も多く製造され、現在でも小型映画の世界でよく見かけられます。鮮明なズームレンズと30.5mフィルムマガジンが特徴です。KMZは、M42レンズマウントとベヨネットマウントの2種類のクラスノゴルスク3を製造しました。M42マウントは、35mmフィルムカメラの様々なレンズを転用できるように設計されています。

各モデルの特徴

クラスノゴルスク1：1965年から1974年まで製造され、36,683台が生産されました。標準レンズはベガ7、ミール11、望遠レンズはベガ9を採用しています。
クラスノゴルスク2：1966年から1977年まで製造され、15,081台が生産されました。望遠レンズにはメテオール5-1が搭載されています。
クラスノゴルスク3：1971年から1989年まで製造され、最も多く105,435台が生産されました。クラスノゴルスクシリーズの中で最も人気があり、望遠レンズにはメテオール5-1を採用しています。
クラスノゴルスク4：1974年から1991年まで製造されましたが、生産台数は不明です。メテオール5-1望遠レンズを搭載しています。

アマチュアからプロまで

現在、クラスノゴルスクは16mmフィルムカメラの中では比較的安価に入手できるため、アマチュア映画制作者に非常に人気があります。豊富なアクセサリーや活発なユーザーコミュニティも存在します。プロの現場でも、特にクラスノゴルスク3は、テレビ局のニュース取材などで使用されることもありました。

映画監督のスパイク・リーは『ゲット・オン・ザ・バス』、クシシュトフ・キェシロフスキは『アマチュア』でクラスノゴルスクを使用しました。また、スピン・ドクターズやスイサイダル・テンデンシーズのミュージックビデオの撮影にも利用されています。

参考文献

Princelle, Jean-Loup (2004). The Authentic Guide to Russian and Soviet Cameras. Ondreville-sur-Essonne: Le Rêve.

関連項目

フィルモ (撮影機)
ボレックス
ベル&ハウエル
S・A・ズヴェーレフ記念クラスノゴールスク工場
クラスノゴルスク2
クラスノゴルスク3
メテオール (写真レンズ)

外部リンク

The Krasnogorsk-3 - NCSプロダクツのウェブサイト (英語)
Krasnogorsk - owyheesound.com (英語)
Krasnogorsk-2 original User Manual (ロシア語)
Krasnogorsk-3 original User Manual (ロシア語)
Krasnogorsk-4 original User Manual (ロシア語)
About K-line 16 mm movie cameras (Soviet space program) (ロシア語)

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