シングル8

シングル8（Single-8）

シングル8は、1965年（昭和40年）に富士フイルムが発表した、個人映画向けの8mmフィルム規格です。これは、コダックが開発したスーパー8に対抗する形で登場しました。シングル8は、独自のフィルムカートリッジと、より薄いポリエステルフィルムを使用している点が特徴です。

歴史

黎明期

- 1932年：コダックがダブル8用撮影機「シネコダック」を発表。これが8mmフィルムの始まりです。
- 1935年：ベル&ハウエルがダブル8を縦に切断した「ストレイトエイト」用撮影機を発表。
- 1937年：アグファが同様のフィルムをカセットに収めた「モヴェックス8」用撮影機を発表。
- 1953年：富士フイルムがダブル8用「ネオパン反転8mmフィルム」を発売。
- 1957年：富士フイルムがダブル8用「フジカラー8mmフィルム」と映写機「フジスコープM-1」を発売。
- 1958年：富士フイルムが磁気録音再生機能付きのダブル8用映写機「フジスコープサウンド」を発売。

シングル8の開発

- 1959年：富士フイルムが8mmフィルムの新システム研究を開始し、甲南カメラ研究所に参加を要請。
- 同年1[[1月]]：甲南カメラ研究所が「シングル8システム」のフィルムマガジンを開発。
- 1960年：富士フイルムがダブル8用撮影機「フジカ8T3」を発売。
- 1962年：富士フイルムがキヤノン、ヤシカ、小西六写真工業に協力を要請。
- 1963年：コダック、アグファ、ベル&ハウエルに協力を要請するも、コダックは新システムに否定的な回答、アグファは前向きな回答を提示。
- 同年7月：富士フイルムが新システムに二軸・直列マガジン方式を採用。
- 1964年：富士フイルムがダブル8用撮影機「フジカ8ズームデラックス」を発売。
- 同年3月-10月：富士フイルムが日本のカメラメーカー13社とアグファと共同開発に関する基本契約を締結。
- 同年5月：新システム名を「ラピッド8」と内定。
- 同年7月：新システムの白黒・カラーフィルム規格を決定。
- 同年8月：コダックが画面サイズ5.36mm×4.01mmの「スーパー8」を発表。
- 同年：富士フイルムは、画面サイズ4.37mm×3.28mmの「ラピッド8」の開発を断念。

シングル8の登場

- 1965年 4月：富士フイルムが「シングル8」を発表し、撮影機「フジカシングル8 P1」、映写機「フジカスコープM1/M2」、カラーリバーサルフィルム「フジカラーR25」、黒白フィルム「ネオパンR50/R200」を発売。

その後の展開

- 1999年：フィルム需要の減少により、サイレントフィルム2種に絞り、新製品「フジクロームRT200N」「フジクロームR25N」の製造販売を開始。
- 2009年：富士フイルムがタングステンタイプ「RT200N」の生産終了を発表。
- 2010年：タングステンタイプのRT200Nが生産終了。
- 2012年：デーライトタイプのR25Nが生産終了。
- 2013年：富士フイルムの自社現像サービスを終了。これにより、シングル8フィルムの製造と現像はレトロエンタープライズのみに。

概要

シングル8は、フィルムの薄さにも関わらず、スプロケット穴や音声トラックに関してはスーパー8と同等の仕様です。スーパー8の映写機で上映可能であり、シングル8の映写機でスーパー8フィルムを上映することも可能です。

カートリッジ構造

シングル8のフィルムは、B字型カートリッジに充填されています。これは、同軸システムのスーパー8とは異なり、2つに分かれたスプールを持つため、巻き戻しに制限がありません。スーパー8は、数秒程度の巻き戻ししかできず、カートリッジ内部の空間に頼るしかありません。

フィルム支持機構

シングル8のカートリッジは、撮影機のフィルムゲートを利用して、露光中にフィルムを支持します。一方、スーパー8では、カートリッジ内部のプラスチック製圧迫板がフィルムを支持します。

フィルムの材質

富士フイルムのシングル8用フィルムが薄いのは、ポリエステル製であるためです。これにより、シングル8とスーパー8フィルムを繋ぎ合わせて映写する場合、焦点調整が必要になることがあります。

現状

シングル8は、スーパー8ほど国際的な普及は見られませんでしたが、現在でも一部で利用されています。富士フイルムは、2010年までデイライト用「フジクロームR25N」とタングステン用「RT200N」を製造していました。現在は、レトロエンタープライズが白黒フィルムを提供しています。サウンドフィルムは製造されていませんが、現像後に磁気テープを追加することは可能です。

撮影機

1965年に「フジカシングル8 P1」が発売された際、女優の扇千景を起用したCMで「マガジン、ポン」「私にも写せます」というキャッチフレーズが話題になり、シングル8は広く普及しました。

各社の参入と撤退

- キヤノン：1965年に「キヤノンシングル8 518」を発売したが、1970年に撤退。
- エルモ：1965年に「エルモ C-200」を発売、1975年までシングル8市場に残った。
- 小西六（コニカ）：1966年に「コニカ 3-TL/6-TL」を発売後、撤退。
- ヤシカ：1966年に「ヤシカシングル8 30-TL」を発売後、撤退。

主な撮影機

- 富士フイルム

- フジカシングル8 P1, Z1, Z2, Z2A, P100, P105, P300, Z600, ZR400, C100, Z450, Z400, ZS400, Z800, Z700, P300, P400, AX100, ZX300, ZX250, ZX500, PX300, ZC1000, AXM100, ZM800, ZXM300, ZXM500, P2, P2 Zoom, 300オートフォーカス, ZC1000, P100サウンドワイド, P300サウンド, P500サウンド, ZX550サウンド, Z850サウンド, P400サウンドオートフォーカス

- キヤノン

- キヤノンシングル8 518, 518SV

- エルモ

- エルモ C-200, C-300, 8S-30, 8S-40, 8S-60, 8S-140, 8S-30T, 8S-40T, 8S-600, 8S-800

- ヤシカ

- ヤシカシングル8 30-TL

- コニカ

- コニカ 3-TL, 6-TL

映写機

シングル8フィルムはスーパー8の映写機でも上映可能です。以下は富士フイルムが発売した主な映写機です。

主な映写機

- フジカスコープM1, M2, SM1, SM2, MG90, SH10, MX70, SH7M, MX50, SH30, SD12, M17, SD20クオーツ, SD25ステレオクオーツコンピューター, SDオート, オートビジョン

フィルム

富士フイルム

- 1965年：カラーリバーサルフィルム「フジカラーR25」、黒白リバーサルフィルム「ネオパンR50/R200」を発売。当初は現像料込み。
- 1967年：タングステンタイプのカラーリバーサルフィルム「フジカラーRT50」発売。
- 1968年：白黒フィルム、1970年にカラーフィルムの現像料をフィルム価格から分離。
- 1973年：フィルム需要がピークに。
- 1976年：サウンド・アフレコ両タイプのフィルム発売。
- 1999年：サイレントフィルム2種に絞り、新製品「フジクロームRT200N」「フジクロームR25N」を発売。
- 2006年：新製品の販売終了を発表するも、2007年に延期。
- 2009年：「フジクロームRT200N」の生産終了を発表。
- 2010年：タングステンタイプのRT200Nが生産終了。
- 2012年：デーライトタイプのR25Nが生産終了。

歴代製品

- フジカラーR25
- ネオパンR50
- ネオパンR200
- フジカラーRT50
- フジクロームRT200
- フジクロームR25
- フジクロームRT200サウンド
- フジクロームR25サウンド
- フジクロームRT200アフレコ
- フジクロームR25アフレコ
- フジクロームRT200N
- フジクロームR25N

その他のフィルム

- アグファ：アグファカラーCT13（1965年）を製造販売。
- レトロエンタープライズ：RK100D（カラー）、レトロX（白黒）を製造販売。

現像

現像サービス

富士フイルムの現像サービスは2013年に終了しました。それまでは、撮影済みのフィルムを富士フォトギャラリー調布で受け付け、現像業務を行っていました。現像処方はMCR-58現像で、1時間あたり約100本の現像処理能力を持っていました。

富士フイルムの現像サービス

- 1965年：フィルム価格に現像料込みで開始。
- 1968年：白黒フィルム、1970年にカラーフィルムの現像料をフィルム価格から分離。
- 1999年：サウンドフィルムの製造販売終了に伴い、「アフレコ仕上げ」（現像＋マグネ塗布）を開始。
- 2008年：「アフレコ仕上げ」を一時停止、後に再開。
- 2013年：現像業務終了。

他社の現像サービス

現在では、レトロエンタープライズ、スーパー8・リヴァーサル・ラボ、ヴィットナー・シネテックなどが現像サービスを提供しています。

自家現像

カラーリバーサルフィルムはE-6[[現像]]、白黒リバーサルフィルムは白黒リバーサルフィルムの現像を参照。

脚注、参考文献、関連項目、外部リンク

- 脚注については、原文の脚注を参照。
- 参考文献については、原文の参考文献を参照。
- 関連項目：8ミリ映画、小型映画、スーパー8mmフィルム、映画の規格の一覧、フジクローム、スタンダード8mmフィルム、シネコダック、ORWO、レトロエンタープライズ。
- 外部リンクについては、原文の外部リンクを参照。

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