クラッシャー前泊

1972年 12月19日生まれ、沖縄県那覇市出身の元女子プロレスラー。本名は前泊美香（まえどまりよしか）。熱いファイトスタイルで、女子プロレス史に名を刻んだ。

プロレスへの情熱とデビュー

幼少の頃からプロレスラーに強い憧れを抱き、特に『クラッシュ・ギャルズ』の長与千種に熱狂的なファンだった。小学5年生で既にプロレスラーを志し、親に内緒で合気道を習い始めたり、年齢を偽って本来利用できないスポーツジムで体を鍛えたりと、並々ならぬ努力を続けていた。長与千種に会える機会があれば、学校を休んで駆けつけ、握手をした手はしばらく洗わず、入浴時はビニール袋を装着するほど、その熱狂ぶりは凄まじかった。

プロレスラーへの第一歩として、全日本女子プロレスの門を叩くが、残念ながらオーディションには二度とも合格できなかった。しかし夢を諦めず、1990年3月10日にFMWでプロデビューを飾る。FMW入団時の同期には、シャーク土屋、里美和、ツッパリマック、ドレイク森松らがおり、奇しくも彼女たちの多くも全女のオーディションに合格できなかったという共通点を持っていた。

デビュー間もない頃、当時のFMW代表である大仁田厚からヒール転向を強く勧められる。前泊は『長与千種さんのような正統派になりたいので、ヒールは嫌です』と強い意思を示して拒否したが、大仁田から『お前のリングでの姿は長与じゃない！悪役そのものだ！』と一喝され、反論できずに涙ながらにヒールを受け入れたというエピソードが残っている。その後、シャーク土屋率いる極悪ヒールユニット『猛毒隊』に加入し、そのヒールスタイルを確立。様々なリングで激闘を展開した。

団体対抗戦の火付け役

1992年7月15日、女子プロレス界全体を揺るがす出来事が起こる。大田区体育館で開催されていた全日本女子プロレスの大会に、クラッシャー前泊が突如乱入。WWWAタッグ王座を保持していた豊田真奈美&山田敏代組に挑戦状を突きつけたのだ。この大胆な行動が、女子プロレス界全体を巻き込む激しい団体対抗戦時代の火ぶたを切ることとなった。

この挑戦表明の背景には、FMW内部での対戦相手の固定化によるマンネリを感じていたこと、そしてシャーク土屋からの誘いがあったことが挙げられる。行動を起こす前には、一応ターザン後藤に許可を取ったとも語っている。団体対抗戦が真っ盛りの頃、全日本女子プロレスの選手は対戦相手を徹底的に叩き潰す試合運びをすると評されていたが、その全女勢をも容赦なく潰しにかかると言われたのは、前泊自身とシャーク土屋の二人だけだったとされ、その徹底したヒールファイトが高く評価されていたことがわかる。

引退、そして一時的な復帰

1999年には、同期のドレイク森松と共にタッグチーム『浪漫兄弟』を結成。ユニークな組み合わせでファンを楽しませた。

そして2000年7月15日、現役を引退する。引退を控えた時期に、『一度も有刺鉄線デスマッチを経験できなかったことが心残りだ』と漏らした言葉が、師である大仁田厚の耳に届く。その計らいにより、彼女のプロレス人生最後となる引退試合は、念願叶って有刺鉄線デスマッチとして行われた。最後までプロレスへの情熱を貫いた形となった。

引退後の活動と現在

リングを降りた後は、名古屋市にて自身がプロデュースするパブ『パブクラッシャー』を経営し、多くのプロレスファンに親しまれた。

2015年12月15日には、ZERO1と超花火の合同興行にて、一夜限りの復帰を果たす。かつてFMWが旗揚げされた記念すべき地、名古屋市総合体育館（現・日本ガイシスポーツプラザ）の会場で行われたこの試合では、シャークTARUとタッグを組み、大仁田厚&長与千種組が持つ爆破王タッグ王座に挑んだ。この復帰戦には、かつての盟友であるシャーク土屋も誘っていたが、土屋は大病を患っていたためリングに上がることは叶わなかった。前泊は土屋への敬意と友情を示すため、猛毒隊時代の土屋の入場テーマ曲を使用し、コスチュームには『シャーク』の文字を刺繍して試合に臨んだが、惜しくも王座獲得はならなかった。

2022年12月24日をもって『パブクラッシャー』を閉店。2023年からは、出身地である沖縄県の宮古島へ移住し、新たな生活を送っている。

主な得意技・タイトル・テーマ曲

得意技: アームボンバー、ダブルアーム式フェイス・バスター
タイトル歴: WWA世界女子王座
* 入場テーマ曲: 初代「PUBLIC ENEMA No.1」（IRON MAIDEN）、二代目「ベトナム」（ZOPIAC）

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