クラリネット協奏曲第2番 (ウェーバー)

ウェーバー：クラリネット協奏曲第2番 変ホ長調 作品74

カール・マリア・フォン・ウェーバーが1811年に作曲したクラリネット協奏曲第2番は、彼のクラリネットのための重要な作品群の一つです。この楽曲は、当時の傑出したクラリネット奏者、ハインリッヒ・ヨーゼフ・ベールマンのために書かれました。ウェーバーはベールマンの技術と表現力を高く評価し、彼のために魅力的なクラリネット作品を複数生み出しています。

作曲の背景と経緯

この協奏曲第2番は、ウェーバーとベールマンの関係から直接生まれたものです。1811年4月、ミュンヘンでのウェーバーのクラリネット小協奏曲初演が大成功を収めました。ベールマンの独奏を聴いたバイエルン国王マクシミリアン1世が深く感銘を受け、ウェーバーにさらに2曲のクラリネット協奏曲の作曲を依頼したのです。この依頼に応え、ウェーバーはまず同年6月にクラリネット協奏曲第1番ヘ短調 作品73を完成させました。そしてそれに続く形で、第2番変ホ長調 作品74を同年7月17日、ミュンヘン郊外のシュタルンベルクで書き上げました。

初演と出版

クラリネット協奏曲第2番の公式初演は、作曲の年である1811年11月25日、ミュンヘンのコンサートで行われました。独奏は依頼主であり献呈相手でもあるハインリッヒ・ヨーゼフ・ベールマンが務めました。作品の出版は、第1番と同様に時間はかかりましたが1822年に行われました。

編成

この協奏曲は、独奏クラリネット（B♭管）と以下のオーケストラで演奏されます。

フルート2
オーボエ2
ファゴット2
ホルン2
トランペット2
ティンパニ
* 弦五部

標準的な二管編成にティンパニを加えたもので、独奏クラリネットの音色と技術が際立つように配慮されています。

楽曲構成と特徴

全3楽章構成で、演奏時間は約25分です。ウェーバーのクラリネット協奏曲の中では、先行する第1番が持つ劇的な雰囲気とは対照的に、より華やかで技巧的な性格が際立っています。

第1楽章：アレグロ (Allegro) 変ホ長調 4分の4拍子

協奏曲風ソナタ形式。楽章全体に行進曲風のリズムが特徴的に現れます。オーケストラによる主題提示に続き、独奏クラリネットが3オクターヴの大きな跳躍で華麗に登場。概ねソナタ形式に沿って展開しますが、再現部では第一主題がオーケストラのみで奏されるなど、工夫が見られます。カデンツァはありませんが、終盤に無伴奏の急速なアルペジオによる聴きどころがあります。

第2楽章：アンダンテ・コン・モート (Andante con moto) ト短調 6分の8拍子

三部形式による憂いに満ちたロマンティックな楽章です。中間部では独奏クラリネットに技巧的な動きが増え、「レチタティーヴォ」と記された部分では劇的な語り口のような表現が求められます。オペラ作曲家としてのウェーバーの才能が垣間見える部分です。

第3楽章：アラ・ポラッカ (Alla polacca) 変ホ長調 4分の3拍子

「ポロネーズ風に」と指定された、軽快で華やかなフィナーレです。小ロンド形式で、多彩な楽想が展開します。この楽章は、当時のクラリネットの技術的な限界に挑むかのような、極めて高度なパッセージが散りばめられているのが特徴です。特にコーダ部分は、独奏者に卓越した技術を要求します。

クラリネット協奏曲第2番は、ウェーバーが楽器の可能性を追求し、ベールマンの類稀な才能を最大限に引き出そうとした意欲作です。そのきらびやかな旋律と超絶技巧的なパッセージによって、クラリネット奏者にとって重要なレパートリーとして、また聴衆にとっても魅力的な協奏曲として、現在も広く愛されています。

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