クリスチャン2世 (デンマーク王)

クリスチャン2世の生涯：王権強化と悲劇

クリスチャン2世（1481年7月1日 - 1559年1月25日）は、デンマーク、ノルウェー、スウェーデンの王として、その生涯は波乱に満ちていました。父であるハンス王の跡を継ぎ、1513年からデンマークとノルウェーの王位に就きましたが、スウェーデン王としては短期間の統治に終わりました。彼の治世は、王権強化の試みと、それに伴う貴族や聖職者との対立、そして悲劇的な事件の連続でした。

若き日の逸脱と愛人デューヴェケ

クリスチャン2世は若い頃から、その奔放な性格で知られていました。宮廷を抜け出しては、若い荒くれ者たちと交流し、市民を脅迫したり、良家の娘たちを乱暴したりといった逸脱行為を繰り返しました。1502年には、ノルウェーで発生した反乱を鎮圧するために出兵し、罪のない人々を含むノルウェー国民を虐殺しました。また、いかがわしい安宿に泊まり、女性を追いかけ回すなどの行状も見られました。1506年、ノルウェーのベルゲンで、ネーデルラント出身の少女デューヴェケと出会い、彼女を愛人としたことは、彼の生涯に大きな影響を与えました。

王妃イサベルとデューヴェケ

クリスチャン2世は、神聖ローマ皇帝マクシミリアン1世の孫娘イサベルと結婚しましたが、王妃には冷淡でほとんど関心を払いませんでした。祖父マクシミリアン1世が、イサベルの兄カール（後の皇帝カール5世）を通して抗議したほどでした。一方、愛人デューヴェケの母シグブリットは、政治的な才能を発揮し、クリスチャン2世を経済政策などで補佐しましたが、その横暴な振る舞いは貴族たちの不満を招きました。

王権強化と宗教改革

1513年、父王ハンスの死後、クリスチャン2世はデンマーク王として即位しました。彼は王権の強化を目指し、貴族や聖職者との対立を深めました。1517年には、愛人デューヴェケが突然変死し、その死因を巡って有力貴族が処刑され、貴族との対立は決定的になりました。この年はマルティン・ルターによる宗教改革が始まった年でもあり、クリスチャン2世はルター派の布教を容認する姿勢を示し、カトリック聖職者の反感をさらに強めました。

スウェーデン遠征と「ストックホルムの血浴」

当時、カルマル同盟下にあったスウェーデンでは反カルマル同盟の動きが活発化していました。クリスチャン2世はスウェーデンに遠征し、反同盟の中心人物であったステーン・ステューレを破り、1520年にスウェーデン王位も手中に収めました。しかし、その後、反クリスチャン勢力をストックホルムで処刑した「ストックホルムの血浴」は、スウェーデン国民の怒りを買い、結果的にスウェーデン独立の動きを加速させることになりました。

亡命と復権の試み

スウェーデンでの失態や、国内での貴族や聖職者との対立が深まる中、クリスチャン2世は叔父のフレゼリクを支持する反クリスチャン勢力によって王位を追われ、ネーデルラントへ亡命を余儀なくされました。しかし、都市市民や農民の支持は依然として厚く、復権の機会をうかがっていました。神聖ローマ皇帝カール5世からイサベルとの結婚の際の持参金の残額を得たクリスチャン2世は、軍を組織して復権を図り、1532年にはノルウェー王を自称しました。しかし、フレゼリク1世によって捕らえられ、その後は長期にわたって幽閉生活を送ることになりました。1559年に幽閉されたまま亡くなりました。

クリスチャン2世の評価：暴君か先駆者か？

クリスチャン2世は、「ストックホルムの血浴」によって、特にスウェーデンでは残忍な暴君として評価されています。しかし、デンマーク史においては、従来の貴族や聖職者を牽制し、官僚制を整備し、都市市民と連携して王権強化を推進した点において、絶対王政の萌芽を見出すことができると評価されることもあります。彼の政策は、スウェーデン独立後に王となったグスタフ1世にも影響を与えたと言われています。

子女

クリスチャン2世は、王妃イサベルとの間に以下の子女をもうけました。

ハンス（1518年 - 1532年）
フィーリプ・フェアディナン（1519年 - 1520年） - 双子
マクシミリアン（1519年） - 双子
ドロテア（1520年 - 1580年） - プファルツ選帝侯フリードリヒ2世と結婚
* クリスティーネ（1521年 - 1590年）- ミラノ公フランチェスコ2世と結婚、後にロレーヌ公フランソワ1世と再婚。

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