クリスマスアカガニ

クリスマスアカガニ（学名：Gecarcoidea natalis）は、オカガニ科に属する地上性のカニの一種で、インド洋に浮かぶクリスマス島とココス諸島の固有種です。限られた地域にのみ生息していますが、クリスマス島には数千万個体が生息しており、繁殖期に見られる大規模な移動は、島の風物詩となっています。

形態

クリスマスアカガニは比較的大きなカニで、甲羅の幅は最大で116mmに達します。通常、ハサミは左右対称ですが、傷を負って再生した場合は例外となります。一般的に、オスはメスよりも体格が大きく、ハサミも大きいです。メスは3歳を超えると、腹部の幅がオスよりも明らかに広くなります。

体色は鮮やかな赤色が一般的ですが、オレンジ色を帯びた個体も存在し、まれに紫色を呈する個体も見られます。

生態

ほとんどの地上性カニと同様に、クリスマスアカガニは鰓呼吸を行うため、体の湿度を保つ必要があります。昼行性ですが、乾燥を防ぐために直射日光を避けて行動します。夜間は低温で湿度が高い環境となりますが、この時間帯にはほとんど活動しません。乾燥から身を守るために、巣穴を掘り、一年を通して同じ巣穴を使用します。乾季には、巣穴の入り口を落ち葉などで塞ぎ、湿度を保ちながら雨季の到来までの約3ヶ月間を巣穴の中で過ごします。繁殖期を除いては単独で生活し、巣穴に侵入してくるものに対しては、防御行動を取ります。

クリスマスアカガニは雑食性で、主に落ち葉、果実、花、子葉などを食べますが、同種の死骸やゴミなども食べます。外来種であるアフリカマイマイも餌となります。島内の森林地帯では優占種であり、事実上、餌を巡る競争はほとんどありません。

人間との関わりと脅威

初期の入植者は、クリスマスアカガニについてあまり言及していません。これは、1903年に絶滅した固有の哺乳類であるブルドッグネズミ（クリスマスジネズミ）が、カニの個体数を抑制していたためと考えられています。1993年から1995年の調査では、成体の密度は0.09–0.57個体/m2であり、島全体の推定個体数は4370万個体と計算されました。

クリスマス島において、成体のカニには天敵は存在しませんでしたが、1990年代からアフリカから移入されたアシナガキアリが爆発的に個体数を増やし、天敵となっています。このアリは、島内のカニの1/3から1/4にあたる1000万から1500万個体を捕食し、種間競争によって1500万から2000万個体のカニを排除したと考えられています。また、繁殖期にはオニイトマキエイやジンベイザメなどの大型濾過摂食者が島の周囲に集まり、放出される大量の幼生を捕食します。

繁殖

クリスマスアカガニは、一年のほとんどを森林の中で過ごしますが、繁殖は海岸で行います。雨季の始まり（10月から11月）とともに活動が活発になり、海岸への移動に備えます。移動のタイミングは月の満ち欠けによって決定され、移動が始まると、それまで使用していた巣穴は放棄されます。海岸への移動には、少なくとも1週間かかります。通常、オスが先に海岸に到着して穴を掘り、他のオスを穴の周囲から追い払います。交尾は穴の中か、その周辺で行われます。オスは交尾後すぐに森林に戻りますが、メスは穴の中で約2週間ほど抱卵します。孵化の直前にメスは穴を離れ、卵を海に放出します。この行動は、下弦の月の満潮時に正確に一致しています。その後、メスも森林に戻ります。

卵は海水に触れるとすぐに孵化し、無数の幼生が雲のように波間を漂います。幼生は外海へと流され、3〜4週間にわたって漂いながら数回の脱皮を繰り返し、最終的にエビに似たメガロパ幼生となります。この幼生は海岸に集まり、1〜2日かけて甲羅の幅が5mm程度の稚ガニへと変態します。稚ガニは海岸を離れ、9日ほどかけて島の中心部へとたどり着き、その後3年ほどは林床の岩や倒木、枝などの下に隠れて過ごします。成長は遅く、性成熟して毎年の繁殖行動を始めるのは4〜5歳になってからです。若い個体は複数回の脱皮を行いますが、成熟すると脱皮は年に1回となります。脱皮は巣穴の中で行われます。

人との関わり

繁殖期の移動中には、クリスマスアカガニは最大で3〜4本の島内の道路を横断することになります。これにより、車両によるロードキルが頻繁に発生し、硬い外骨格がタイヤを損傷させることによる交通事故も起きています。カニと人間の双方の安全を守るため、地元の自然保護官は、カニが安全に海岸にたどり着けるよう努めています。交通量の多い道路沿いには、「クラブフェンス」と呼ばれるアルミニウム製の柵が設置され、カニを「クラブグリッド」と呼ばれる小さな地下道に誘導するようになっています。近年では、住民もカニの存在に寛容になってきており、繁殖期には運転に注意し、カニへの被害を最小限に抑えるよう努めています。

クリスマスアカガニは雑食性であるため、人間は通常食用にはしません。

もう一度検索