クリル (イキレス部)

クリル・キュレゲン：モンゴル帝国の勇将、イキレス部族の光芒

クリル・キュレゲン（忽憐）は、13世紀のモンゴル帝国において重要な役割を果たしたイキレス部族の長です。彼は、チンギス・カンに仕えたブトゥ・キュレゲンの曾孫にあたり、その血筋は帝国に深く根ざしていました。特にシリギの乱やナヤン・カダアンの乱といった内戦において、その軍事的才能を発揮し、帝国の安定に貢献しました。

生涯

クリルの出自は、『元史』に詳しく記されています。彼はブトゥ・キュレゲンの息子フルダイの息子であるジャクルチンの子として生まれました。彼はモンケ・カアンの娘バヤルンを娶り、キュレゲン（娘婿）の称号を得ました。この婚姻は、彼の地位をさらに高めることとなりました。

1276年に勃発したシリギの乱では、クリルは鎮圧軍の一員としてモンゴル高原に派遣されました。トク・テムル軍との戦いにおいて、彼は特に目覚ましい活躍を見せ、その功績をクビライから高く評価されました。その褒賞として、クビライはクリルにモンケ・カアンの孫娘ブラルキを娶ることを許し、江南の広州路を新たな投下領として与えました。

1287年に始まったナヤン・カダアンの乱でも、クリルは重要な役割を担いました。特にカダアンの乱平定戦において、彼の軍事的才能が発揮されました。カダアンはナヤンの捕殺後も投降せず、北方へ逃走しましたが、クリルは追撃軍に加わり、セチェゲン軍が敗れたコシューンの戦いで援軍として派遣されました。クリル軍はカダアン軍を破り、カダアン軍は本拠地への撤退を余儀なくされました。

1288年、クビライは孫のテムルを主将とする新たな討伐軍を派遣しました。クリルはテムル軍と合流し、タウル河とその支流グイレル川の間でカダアン軍と激突しました。この戦いにおいて、クリルはベク・テムル、洪万、李庭らと共に参戦し、李庭が「火砲」を発射してカダアン軍の馬を混乱させるという戦術が功を奏しました。この隙に元軍は渡河し、カダアン軍を破りました。ベク・テムルが敵将アルグン・キュレゲンを討ち取るなど、多くの将兵の活躍により元軍は勝利を収めました。クリルは敗残兵を皆殺しにし、その功績によりクビライから多大な褒賞を受けました。

その後もクリルはウラ河の戦いで夜襲を成功させ、敵軍に大打撃を与えました。しかし、間もなくしてクリルは亡くなり、その功績を讃えられ昌王に追封されました。

子孫

クリルの息子アシクもまた、帝国の重要な人物として活躍しました。アシクはテムルに仕え、カイドゥ・ウルス軍とのテケリクの戦いにも参加し、ドゥアを負傷させるという功績を挙げました。アシクの子バラシリもまた皇族の女性を娶り、キュレゲンを称しました。

イキレス駙馬王家

イキレス駙馬王家は、クリルの血筋を受け継ぎ、モンゴル帝国において重要な地位を占め続けました。ノクズから始まる一族は、代々皇族の女性を娶り、帝国との絆を深めていきました。特に、チンギス・カンの娘やオゴデイの息子クチュの娘など、高貴な血筋の女性たちがこの一族に嫁いだことは、彼らの地位の高さを示しています。

このリストは、イキレス駙馬王家がいかにモンゴル帝国の皇室と密接な関係を築いていたかを示しています。

クリル・キュレゲンは、モンゴル帝国の激動の時代を生き抜き、その軍事的才能と忠誠心によって帝国の安定に貢献しました。彼の生涯は、モンゴル帝国の歴史において重要な一章を刻んでいます。

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