クリンユキフデ

クリンユキフデ（九輪雪筆）

クリンユキフデ（学名：Bistorta suffulta）は、タデ科イブキトラノオ属に分類される多年草です。

特徴

根茎: 短く肥厚し、地中を浅く横に這います。
茎: 細長い円柱形で直立し、緑色をしています。開花初期には高さ5-10cmと短いですが、後に20-50cmまで伸びます。
根出葉: 長い葉柄を持ち、卵状心形で、長さ5-14cm、幅3-9cm程度です。葉の表面は無毛で、裏面は白みを帯びています。葉柄に翼はありません。
茎につく葉: 互生し、下部の葉は卵形で短い葉柄がありますが、上部の葉は葉柄がなく、基部は茎を抱き込みます。開花初期には基部が裏側に巻き込まれています。
托葉鞘: 褐色で膜質、無毛で2裂します。
花期: 4月末から6月にかけて開花します。
花序: 茎先に長さ1-3cm、径7-10mm程度の花序をつけます。花序は上部の葉腋にも生じ、花柄がありません。
花: 花冠のように見えるのは萼片で、白色で5深裂し、裂片は長さ2.5-3.3mmです。雄蕊は8個で、葯は淡紅紫色をしています。花柱は3個です。
果実: 3稜のある卵形の痩果で、褐色で光沢があり、長さ2.5-3.2mm程度です。宿存する萼片に包まれています。
染色体数: 2n=24です。

分布と生育環境

日本では、本州の岩手県以南の太平洋側、四国、九州に分布し、冷温帯の山地の木陰や林内に生育します。世界では、済州島、中国大陸、東ヒマラヤに分布しています。

名前と由来

和名の「クリンユキフデ」は、「九輪雪筆」を意味します。

米倉浩司氏の見解: 雪のように白い筆状の花穂を数層につけることから名付けられたとしています。
牧野富太郎氏の見解: 葉が茎に層をなして生える様子を「九輪」とし、白い花穂を「雪筆」と表現したとしています。

飯沼慾斎の『草木図説』には、「クリンユキフデノ名義難認。ダンザキノハルトラノオと稱スベキ乎」と記載されています。種小名 suffulta は、「支持した」「助ける」という意味です。

分類

クリンユキフデは、日本に産するイブキトラノオ属の中でも、小型で低地から山地に生育する種で、アブクマトラノオやハルトラノオと近縁です。

アブクマトラノオ: 花柄が長く、萼裂片が星型に大きく開く点が異なります。宮城県南部から福島県東南部の阿武隈山地にのみ分布します。
ハルトラノオ: 花茎は葉より低いか同じ高さで、根出葉の葉柄に翼があります。葉の基部は切形かくさび形になり、他の2種とは異なります。

下位分類

ケクリンユキフデ: 葉の裏に細毛があるものを変種として扱います。埼玉県雲取山、山梨県三つ峠で採集されました。品種名 pubescens は、「細軟毛のある」という意味です。

参考文献

北村四郎・村田源著『原色日本植物図鑑・草本編II（改訂53刷）』、1984年、保育社
門田裕一監修、永田芳男写真、畔上能力編『山溪ハンディ図鑑2 山に咲く花（増補改訂新版）』、2013年、山と溪谷社
大橋広好・門田裕一・木原浩他編『改訂新版 日本の野生植物 4』、2017年、平凡社
牧野富太郎原著、邑田仁・米倉浩司編集『新分類 牧野日本植物図鑑』、2017年、北隆館
米倉浩司・梶田忠 (2003-)「BG Plants 和名−学名インデックス」（YList）
牧野日本植物図鑑インターネット版、高知県立牧野植物園
飯沼慾斎 草木図説前編20巻(7)、コマ番号62/100、国立国会図書館デジタルコレクション-2021年1月31日閲覧
* けくりんゆきふで (槍山庫三)、『植物学雑誌』、The Journal of Japanese Botany、第17巻第5号318頁、(1941)

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