クリーティス・リロイ・ボイヤー:不屈の精神と卓越した守備で日米を魅了した名手
クリーティス・リロイ・ボイヤー(Cletis Leroy Boyer)は、
1937年2月9日にアメリカ・
ミズーリ州のアルバで生まれました。父はフランス系、母はドイツ系であり、13人兄弟の四男として育ちました。兄弟のうち、長兄のクロイド、次兄のケン、そしてボイヤーの3人がメジャーリーガーとして活躍し、他の兄弟も
プロ野球選手としてプレーした野球一家でした。
メジャーリーグでの活躍
高校卒業後、ボイヤーは伝説的なスカウト、グリーンウェイドに見出され、1955年にカンザスシティ・アスレチックスに入団。マイナーリーグを経験することなく、メジャーデビューを果たしました。その後、
ニューヨーク・ヤンキースに移籍し、1960年から正
三塁手に定着。ヤンキースの黄金時代を支え、
アメリカンリーグ5連覇、2度のワールドシリーズ優勝に貢献しました。
1964年のワールドシリーズでは、次男のケン(カージナルス)との兄弟対決が話題となりました。
1967年には
アトランタ・ブレーブスへ移籍し、1969年にはナショナル・リーグの
ゴールドグラブ賞を受賞。しかし、1971年には球団フロントとの対立から自由契約となり、アメリカ
独立リーグでプレーすることになりました。
大洋ホエールズでの挑戦
1972年、ボイヤーは「アメリカでまだまだやれる」ことを証明するため、大洋ホエールズ(現:横浜DeNAベイスターズ)に入団。年俸は大幅に下がったものの、日本でのプレーを選びました。入団当初から、そのひたむきな練習態度とユーモア溢れる人柄でチームメイトや首脳陣から尊敬を集めました。
ボイヤーは、
ジョン・シピンや
通訳の
古賀英彦と親交を深め、チームに溶け込みました。大洋では、シピン、米田慶三郎、
松原誠と共に、12球団屈指の守備力を誇る内野陣を形成。1973年にはコーチ兼任となり、ダイヤモンドグラブ賞を受賞。1974年には
長嶋茂雄を抑えて再び受賞し、日米両方でゴールドグラブ(ダイヤモンドグラブ)を受賞した最初の選手となりました。
ボイヤーの守備は、グラブでボールを捉えるのではなく、打球を一旦止めることで、正確で素早いスローイングに繋げるものでした。三塁線の打球処理能力は高く、その華麗なグラブ捌きは、
川上哲治監督をして「グラブだけで飯が食える」と言わしめました。また、契約更改では年俸交渉をせず、球団の評価通りにサインするなど、その人格も高く評価されました。
1975年に選手専任に戻り、同年限りで現役を引退しました。
引退後
引退後もボイヤーは大洋に残り、一軍内野守備コーチを務め、チームの采配にも関与しました。
田代富雄や
山下大輔など、若手選手の育成に尽力。その指導力は高く評価され、次期監督候補にも挙がりました。
帰国後は、古巣ブレーブスのマイナーリーグコーチを経て、アスレチックスやヤンキースでコーチを歴任。ヤンキース時代には
デレク・ジーターを育てたことでも知られています。晩年は、クーパーズタウンでレストランを経営し、多くの野球ファンに愛されました。
人物像
ボイヤーは、親しみやすくユーモアがあり、周囲の人々から慕われる人物でした。日本の文化にも関心を持ち、積極的にチームに溶け込もうとする姿勢は、多くのファンや選手たちを魅了しました。
王貞治を尊敬し、スランプに陥った際には、親身になってアドバイスを送ったエピソードも残っています。
また、ボイヤーの指導を受けた選手たちは、後にコーチとなり、その技術を後世に伝えました。大洋から横浜へと続く鉄壁の内野守備は、ボイヤーの功績を物語るものでしょう。
詳細情報
MLB:
ゴールドグラブ賞:1回(1969年)
NPB:
ダイヤモンドグラブ賞:2回(1973年、1974年)
記録:
初出場:1972年
4月11日、対広島東洋カープ戦
初安打:1972年4月12日、対広島東洋カープ戦
初本
塁打:1972年4月22日、対
中日ドラゴンズ戦
背番号:
12, 34, 6, 4, 41, 40, 47
2007年6月4日、ボイヤーは
脳内出血のため、70歳でその生涯を閉じました。しかし、彼が野球界に残した功績は、これからも語り継がれるでしょう。