クリ文化

クリ文化の概要

クリ文化（クリぶんか、英語: Kulli culture）は、約紀元前2500年から紀元前2000年にかけて、現在のパキスタンに位置するバローチスターン州南部で栄えた先史時代の文化です。この文化は、インダス文明の影響を受けつつも、独自の特性を持つ文化であったとされており、詳細はまだ解明されていません。そのため、クリ文化がインダス文明の地域的なバリエーションであったのか、はたまた独立した文化的枠組みであったのかは議論の余地があります。この名称は、考古学者サー・オーレル・スタインが行った発掘調査に由来しています。

集落の特徴

クリ文化の集落は、100か所以上が知られていますが、大規模な発掘が行われたのはその中の一部にすぎません。それらの集落の中には、小さな町規模のものもあり、インダス文明の中心部に似た構造を持っていました。家々は地元産の石材を用いて建設され、舗装された街路が存在していたり、階段によって上下に移動できるようになっていたとのことです。集落はしばしば戦略的な位置に設置され、小高い丘の上にあることが多く、周囲の景観を一望できるような配置がなされていました。またほとんどの集落の近くにはダムが見られ、その水管理システムの発展も、彼らの経済基盤が農業であったことを示唆しています。

特に、ムルダ・サン（Murda Sang）という町は、約35ヘクタールの面積を持ち、クリ文化の遺構が確認されています。興味深いことに、ニンドワリはクリ文化にとって重要な集落と考えられています。ソール・ダム（ナル）も初期にはクリ文化の一部であるとされていましたが、のちの研究により、ナル陶器という独自の技術に属することが明らかになっています。

経済と生活

クリ文化の人々は主に農業によって生計を立てていました。彼らの集落には、整備された水管理が施されており、高度な灌漑システムが存在していたことが確認されています。これにより、周囲の農地での耕作が可能となり、安定した食糧供給が実現していたと言われています。

物質文化

クリ文化の陶器は、独特の造形を特徴としており、球状のビーカー、小型フラスコ、背の高い花瓶や皿などの形状が確認されています。特に大きな貯蔵用ジャーには美しい塗装が施されることがあり、インダス文明と共通する特徴として、スタンド付き皿や穴の空いた容器も見られます。陶器には鮮やかな赤色が使われ、装飾的な絵が描かれることもあり、幾何学模様や動植物の形が表現されています。その中でもコブウシのモチーフが多く見られ、動物描写が様式化されている様子がうかがえます。

また、女性像やコブウシを模した人形も発見されており、細部にわたって装飾が施されています。さらに、牛にひかせる車の粘土細工も見つかっており、獲得したさまざまな資源を利用する生活様式があったことが想像されます。メヒでは、緑泥石製の装飾容器も発見されており、これは後のイラン東部との交易を示す証拠とされています。

クリ文化の遺物は、さまざまな素材が使われており、銅や青銅もすでに知られていたことから、技術的にも進んだ文化であることが分かります。彼らの文化は、周囲の地域との交易などを通じてさらなる発展を遂げた可能性があります。

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