クルーシブル

『クルーシブル』（The Crucible）は、1996年に制作されたアメリカ映画で、アーサー・ミラーの戯曲『るつぼ』を映画化した作品です。この映画は、1692年のマサチューセッツ州セイラムを舞台に、魔女裁判という狂気の沙汰が引き起こした悲劇を描いています。

物語は、敬虔なクリスチャンたちが暮らすセイラムの村から始まります。村の実力者であるジョン・プロクターは、周囲からの信頼も厚い人物でしたが、妻のエリザベスとの関係は冷え切っていました。一方、かつてプロクターの家で奉公していたアビゲイル・ウィリアムズは、プロクターとの関係を断ち切られた後も彼への執着を捨てきれずにいました。

ある日、村の少女たちが森で集まり、黒人の娘ティテュバを中心に儀式を行います。少女たちの目的は、意中の男性に恋の魔法をかけることでしたが、アビゲイルの目的は、プロクターの妻に呪いをかけることでした。儀式の最中、アビゲイルはティテュバに真意を打ち明けますが、拒絶されたことで激高し、トランス状態に陥って鶏の血を飲むという常軌を逸した行動に出ます。少女たちはアビゲイルに釣られて狂乱状態となり、裸で踊り出す者も現れました。

そこに牧師のパリスが通りかかったことで、少女たちは一転してパニックに陥ります。当時、集団で踊ることは教義で禁じられており、少女たちは自分たちの行いが露見することを恐れました。逃げ惑う中、少女たちのうちの二人が意識を失い、村では「悪魔憑き」の噂が広まります。儀式の真相を知られたくないアビゲイルたちは、悪魔が村人に憑依していると嘘をつき、無実の村人たちを魔女に仕立て上げていきます。彼女たちの主なターゲットは、個人的な恨みを持つ人々でしたが、必死の形相で悪魔の存在を訴える彼女たちの演技に、パリスをはじめとする村人たちは簡単に騙されてしまうのです。

こうして、近隣の町から判事が召集され、「セイラム魔女裁判」が始まります。アビゲイルが扇動する少女たちの言動はますますヒステリックになり、魔女の濡れ衣を着せられた罪のない人々は増え続け、無実を訴える声は無視され、牢に繋がれた村人たちの処刑が始まります。死を待つ村人の中には、アビゲイルが愛するジョン・プロクターとその妻エリザベスの姿もありました。

プロクターの処刑をその日に控えた早朝、アビゲイルは彼を救うため叔父の金を盗み、牢に忍び込みます。二人で逃げることを提案しますが、アビゲイルの行いを嫌悪するプロクターは彼女を拒絶します。アビゲイルは一人で村を逃げ出し、ようやく彼女の言動の異常さに気づいた判事たちは、事態を収拾するためプロクターに悪魔と契約したという嘘の署名をすることと引き換えに釈放を提案しますが、プロクターは妻との最後の語らいの末、自身のプライドを選びます。

結局プロクターを含め19人の村人が処刑され、セイラム魔女裁判は終結します。この映画は、人間の欲望、嫉妬、そして集団心理の恐ろしさを描いており、観る者に深い衝撃を与えます。

主な登場人物

ジョン・プロクター：ダニエル・デイ＝ルイス（大塚明夫）
アビゲイル・ウィリアムズ：ウィノナ・ライダー（岡本麻弥）
トーマス・ダンフォース判事：ポール・スコフィールド（大木民夫）
エリザベス・プロクター：ジョアン・アレン（佐藤しのぶ）
サミュエル・パリス牧師：ブルース・デイヴィソン（有本欽隆）
ジョン・ヘイル牧師：ロブ・キャンベル（家中宏）

この映画は、アーサー・ミラーの戯曲『るつぼ』を忠実に再現しており、17世紀の社会における宗教的偏見とヒステリーがもたらす悲劇を、迫力ある映像と俳優たちの熱演によって描き出しています。観る者は、狂気に染まっていく少女たちの姿や、無実の罪で命を落としていく人々の苦悩を通して、人間の心の闇と社会の脆さを痛感させられるでしょう。また、ジョン・プロクターの人間としての尊厳を貫く姿は、観る者に深い感動を与えるでしょう。

原作
アーサー・ミラー『るつぼ』（ハヤカワ演劇文庫、ISBN 978-4-15-140015-5）

外部リンク
クルーシブル - allcinema
クルーシブル - KINENOTE
The Crucible - オールムービー（英語）
* The Crucible - IMDb（英語）

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