クレマン・ロレ

クレマン・ロレ（Clément Loret, 1833年 - 1909年 2月14日）は、ベルギーに生まれ、後にフランスに帰化したオルガニスト、作曲家です。

生涯

ロレはベルギーのデンデルモンデで生を受けました。父イッポリトは地元のノートル＝ダム教会にオルガンを建造し、自らオルガニストを務めていました。幼少期のロレは、父から音楽とオルガンの基礎を教わります。7歳で教会のオルガン演奏を始め、翌年からは父の代役を務めることもありました。1846年、父がモンスのオルガニストに任命されたため、ロレはジュール・ドニューフのもとで音楽の研鑽を積むことになります。

1851年にブリュッセル王立音楽院に入学したロレは、ジャック＝ニコラ・レメンスにオルガンを、フランソワ＝ジョゼフ・フェティスに対位法を師事しました。彼は特にオルガンで優れた才能を発揮し、1853年には一等賞を獲得しています。

1855年、ロレはパリへと旅立ちます。レメンスは著名なオルガン制作者アリスティド・カヴァイエ＝コルへの紹介状を書きましたが、カヴァイエ＝コルはロレに強い印象を受けなかったため、彼を弟子として受け入れることはありませんでした。しかし、ハーモニウム制作者のヴィクトル・ムステルとの出会いを機に、ロレはパリに留まることを決意します。彼はシュレンヌとパリのノートル＝ダム＝デ・ヴィクトワール教会のオルガニストに就任しました。さらに、第二帝政期の1855年から1885年にかけては、国のバシリカとなっていたサン・ジュネヴィーヴ教会（現在のパンテオン）に設置されたカヴァイエ＝コル製最新オルガンのオルガニストを務めます。また、1858年から1866年まで、ルイ・ニデルメイエールが合唱指揮者を務めるサン＝ルイ＝ダンタン教会のオルガニストも兼任しました。

ロレの功績として特筆すべきは、教育者としての手腕です。1858年、彼はニデルメイエール音楽学校にオルガンの教授として迎えられました。ここで彼は、ガブリエル・フォーレ、アンリ・ルトカール、ウジェーヌ・ジグーといった、後にフランス楽壇を代表するオルガン奏者となる多くの優れた弟子を育成しました。

ロレの家族にも音楽家が多くいました。若くして亡くなった兄弟のシャルルは音楽家・作曲家であり、妻のPhilippine Coloniusもまた才能ある音楽家でした。息子のヴィクトル・ロレは音楽家、音楽学者であり、さらに高名なエジプト学者としても知られています。ヴィクトルはサン＝サーンスと親交があり、その影響でファラオ時代の音楽や楽器に関心を抱き、民族音楽学者として南エジプトの舞踊や音楽を記録しました。

ロレはフランスのコロンブでその生涯を閉じました。

作品

クレマン・ロレは多作な作曲家であり、特にオルガン曲を数多く残しました。作品の一部は、彼自身がパリで経営していた出版社Loret Fils & H. Freytagから出版されています。

主要な作品には以下のようなものがあります。

オルガン曲

『オルガン練習曲』全3巻
『オルガンのための24の練習曲』（足鍵盤あり・なし各12曲）
『ミサと晩課のための50のオルガン曲』
『足鍵盤なしの24のオルガン小品』
『やさしい小品「崇高なる聖務」』
オルガンソナタ第1番ト短調 Op.25 (1889年)
オルガンのための後奏曲「アレルヤ！」変ホ長調
田園風幻想曲
「結婚の祝福」イ長調
カノンの形式による2つの表現のための楽曲
クリスマス・キャロルによるオルガンのための変奏曲 (1890年)
『オルガンのための12の作品』 (1898年) - 「アレグロ・マエストーソ」「祈り」「シャコンヌ」「終曲」などが含まれる。
ヘンデルの『6つのオルガン協奏曲 Op.4』および『Op.7』のオルガン独奏用編曲（カデンツァ付き）
『オルガンのための全奏法』 - 足鍵盤あり・なし、現代オルガン、即興演奏、カントゥス・プラヌスと伴奏に関する包括的な教本。
性格的楽曲集 - 「不在」「田園曲」「憂鬱」「ヴェール拝戴」「水の上」「ボレロ」「魔笛（モーツァルト）」「陶酔」「カンティレーヌ」「思い出」「ピフェラリ」「アルチェステ（グルック）」など。
『オルガンのための6つの作品』 (約1900年) - Op.40『結婚行進曲』、Op.42『祈り』、Op.45『スケルツォ＝ファンファーレ』などを含む。

歌曲

「滑れ我が小舟よ」「二人の囚人」「私を愛していると言って」「眠れ（セレナード）」「黒人女性の子」「花」「子供の枕」「夢見、祈り、愛する」「夏」「そうです、あなたを愛しています」など。

ピアノ曲

練習曲、性格的楽曲（「春のしずく」「スケルツォ」「夢想＝夜想曲」「湖の雨」「我が子よ眠れ」など）、前奏曲とフーガ、歌詞のないロマンスなど。

その他

ハーモニウムのための『12の小品』
ハーモニウムとピアノのための『12の小品』
ピアノとオルガンのための『夜想曲第2番』
ピアノとオルガンのための『ボレロ』
交響曲ニ長調（大管弦楽のための、未出版）
オラトリオ『Le Calvaire』（未出版）
* ピアノ協奏曲（未出版）

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