クレージーだよ天下無敵

映画『クレージーだよ天下無敵』の魅力

1967年1月14日に公開された『クレージーだよ天下無敵』は、クレージーキャッツが主演する作品である。この映画は、坪島孝監督によるもので、子供の頃に観た中川信夫監督の『エノケンの頑張り戦術』を現代風にアレンジした「作戦シリーズ」の第8作目として位置付けられている。興味深いことに、本作ではダブル主演の植木等と谷啓を除く他のメンバーはほとんど端役としての出演に留まっている。

本作は、これまでの「総天然色」から一歩進んで、ポスター等には「カラー作品」という表記がされた初の東宝クレージー映画でもある。併映作品としては、「駅前シリーズ」の一作である『喜劇 駅前満貫』（監督：佐伯幸三）が上映されたが、クレージー映画と駅前シリーズの組み合わせは本作が最後となったことも注目に値する。

ストーリー概要

物語は、神代の昔からの宿敵である猿飛三郎と犬丸丸夫が、トヨトミ電機と徳川ムセンという競合企業の調査室に入社するところから始まる。二人は熾烈なスパイ合戦を展開するが、ある日、犬丸は婚約者のみどりと共に、専務の秘書和子とともに外出した猿飛を追いかける。しかし、喧嘩が原因で二人は彼女に置いてけぼりにされてしまう。

その後、バーのマダム真奈子と知り合い、そこで仲直りする二人だが、意気投合した席で双方の会社が立体テレビの開発に取り組んでいることを知る。重役たちは互いに相手よりも早く立体テレビを完成させるために奮闘を促すが、その影で国際的な産業スパイが立体テレビの設計図を狙って動き始めるという、緊迫した展開が繰り広げられる。

ロケ地とスタッフ

映画の撮影場所には、東京の中央区八丁堀や経堂駅近辺、首都高宝町ランプ、馬事公苑などが使用され、当時の雰囲気をリアルに再現している。製作は渡辺晋、脚本は田波靖男、音楽は萩原哲晶が担当しており、映画全体の完成度を高めている。

キャストには、主演の植木等（猿飛三郎）と谷啓（犬丸丸夫）に加え、野川由美子（石川和子）、高橋紀子（松野みどり）、北あけみ（魚住真奈子）などが名を連ね、個性的なキャラクターが多彩に演じられている。さらにシーンに彩りを加えるのが、アカペラで歌われる「遺憾に存じます」や、多くの楽曲が挿入され、観客を楽しませる要素となっている。

ユーモアと楽しさ

本作は、ストーリーの随所にユーモラスな要素が散りばめられており、スパイ活動の真剣な合間に繰り広げられる笑いが、映画の魅力を一層引き立てている。また、全体を通して観るクレージーキャッツの個性的なパフォーマンスも、この映画を特別なものにしている。彼らのユーモアとコメディのセンスは、観客を魅了し続け、今なお多くの人々に愛されていることを実感させる。

『クレージーだよ天下無敵』は、ただのコメディ映画の枠を超え、時代を超えたエンターテインメントとして多くの人に親しまれている作品である。

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