駅前シリーズ

駅前シリーズ：高度経済成長期の日本を彩った国民的喜劇映画

1958年から1969年にかけて、日本映画界を代表する喜劇俳優、森繁久彌、伴淳三郎、フランキー堺の3人が主演を務めた映画シリーズ『駅前シリーズ』。全24作品という驚異的な数の作品が制作され、高度経済成長期の日本社会を背景に、地方や下町を舞台にした軽妙洒脱な笑いが、多くの人々を魅了しました。東宝系東京映画製作、東宝配給という体制で制作された本作は、社長シリーズ、若大将シリーズ、クレージー[[映画]]と並び、1960年代の東宝を支える屋台骨となった大ヒットシリーズとして知られています。

シリーズ誕生と発展：井伏鱒二の小説から国民的シリーズへ

シリーズの始まりは、井伏鱒二の小説『駅前旅館』の映画化でした。豊田四郎監督の手によって映画化された第一作目は、文芸路線の作品でしたが、その高い評価を受けて、1961年の第二作目から「喜劇」を冠したシリーズとして展開されることになります。シリーズが進むにつれて、舞台となる場所は地方都市や下町へと広がり、ご当地映画的な要素が強くなっていきました。

当時の東宝作品は、都会的でモダンな雰囲気を特徴とする「東宝カラー」が主流でしたが、『駅前シリーズ』は、地方や下町を舞台とした作品が多く、松竹映画のような作風を感じさせるものとなりました。これは、東京映画が東宝の傍系会社であり、東宝生え抜きの俳優よりも、他社から移籍してきた俳優を多く起用していたことが大きな要因です。伴淳三郎、淡島千景、淡路恵子（松竹）、フランキー堺（日活）、池内淳子、大空眞弓（新[[東宝]]）など、主要キャストの多くが他社出身の俳優であったことは興味深い点です。

シリーズ共通項と個性的なキャラクター：変わらない3人と変わる物語

『駅前シリーズ』の基本的な設定は、高度経済成長期の日本の象徴的な場所である「駅前」を舞台に繰り広げられる喜劇です。第二作目以降は、森繁久彌演じる徳之助（金之助の場合もあり）、伴淳三郎演じる孫作、フランキー堺演じる次郎の3人を中心に物語が展開されます。3人の関係性は、友人関係や敵対関係など、作品ごとに変化に富んでおり、シリーズを通して一貫した人物設定があるわけではありません。共通しているのは、この3人が主要キャストであることと、タイトルに「駅前」が付いていることくらいです。

華やかな脇役たち：個性豊かなキャストが彩る脇役陣

森繁久彌、伴淳三郎、フランキー堺の3人以外にも、多くの個性的な俳優が脇役として出演しています。森光子、淡島千景、淡路恵子、池内淳子、大空眞弓といった女優陣に加え、三木のり平、山茶花究、松山英太郎、沢村貞子、京塚昌子、乙羽信子、中村メイコ、左卜全、加東大介、坂本九といったベテラン俳優や人気俳優も多数出演。さらに、蔵忠芳、頭師佳孝、雷門ケン坊（吉野謙二郎名義）といった子役たちも重要な役割を果たしています。

そして、歌手の五月みどり、プロ野球選手である王貞治、ジャイアント馬場、大相撲力士の星野勘太郎、佐田乃山、栃光、栃ノ海、出羽錦（後の田子ノ浦親方）といった、各界の著名人もゲスト出演しており、シリーズの賑やかさをさらに増しています。スリーファンキーズ、和田弘とマヒナスターズ、ザ・スパイダース、ザ・ダーツといった人気グループも出演し、当時の音楽シーンも反映された作品となっています。

後世への影響とDVD化：語り継がれる名作

『駅前シリーズ』は、高度経済成長期の日本社会をリアルに、そしてユーモラスに描き出した作品群として、現在も高い人気を誇ります。東宝によりシリーズ作品の一部はDVD化されており、2024年には全作品がDVD化され、長年のファン待望のリリースとなりました。シリーズ終了から55年を経て、ようやく全作品を視聴できるようになったことは、このシリーズの持つ価値と魅力を改めて示すものと言えるでしょう。

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