クロトガリザメ

クロトガリザメ (黒尖鮫 - Carcharhinus falciformis)

クロトガリザメは、Carcharhinus属に属し、世界の熱帯外洋域に分布するサメの一種です。全長は通常2.5メートルで、体は細長く流線型です。特徴的な第一背鰭と長い第二背鰭、鎌状の胸鰭を持ち、背面は金属光沢の灰褐色、腹面は白色となっています。この滑らかな皮膚から、英名「Silky shark」が名付けられました。曖昧な捕食者として知られ、特に硬骨魚や頭足類を好んで捕食します。群れを作って行動し、連携して小魚を捕らえることでも知られています。

生息環境と分布

クロトガリザメは、水温23℃以上の海域でよく見られます。大西洋ではマサチューセッツ州からスペイン、南はブラジル南部及びアンゴラ北部まで分布し、地中海やカリブ海にも姿を見せます。インド洋や太平洋でも同様に広範囲にわたり、北限は南中国海や日本からバハカリフォルニア、南限はシドニー近郊やニュージーランド北部まで及びます。

このサメは主に外洋性であり、深度500メートル以上潜ることもありますが、通常は海面から200メートルまでの範囲で観察されます。通常は群れを作って活動し、特に若い個体は大きな群れを形成して身を守る傾向があります。彼らは日夜問わず活動的で、環境に応じて移動し、さらには遠距離を回遊するといった行動も見られます。

形態と生理学

体形は細長く、頭部は丸みを帯びています。目は中程度の大きさで瞬膜を持ち、鋸歯状の歯は獲物を捕らえるために特化しています。背鰭の最初は比較的小さく、第二背鰭はより長く、特異な形状を持つことで本種を識別する助けになります。皮膚は細かい皮歯に覆われ、全体的に滑らかな外観を呈します。通常の成体は2.5メートルですが、最大全長は3.3メートルに達することもあります。

生態と行動

クロトガリザメは、好奇心が強く、攻撃的な捕食者とされています。他の種類のサメと異なり、本種はしばしば水面近くにいて、獲物を狩る際には集団で協力して行動します。鳴き声や音に敏感で、獲物を追う際に音を利用することが知られています。また、他の捕食者と競合することもあり、漁業では間接的に人との接触もありますが、遭遇する機会は少ないとされています。

繁殖と生活史

本種は胎生で繁殖し、妊娠期間は約12ヶ月とされます。雌は毎年または2年ごとに最大16匹の仔を出産することができ、母体の大きさにより出生数が異なります。若い個体は、岩礁を成育場として成長し、数ヶ月後には外洋へと移動します。成長速度は地域によって異なりますが、一般的には22年の寿命があると考えられています。

人との関わりと保全状況

その体の大きさと鋭い歯形から、潜在的な危険存在とされていますが、外洋のため人間との接触は稀です。しかし、興奮した場合には攻撃的になることがあり、特にダイバー倫理に多大な影響を与える可能性があります。現在、IUCNはクロトガリザメの保全状況を危急種と分類しており、漁業による影響が大きく見られます。乱獲や混獲の影響で個体数は減少しており、保護が求められています。国際的な活動としてフィニング禁止や資源管理が進められていますが、実情は依然厳しい状況にあると言えるでしょう。

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