クロミズム

クロミズム：外部刺激で色が変わる物質の不思議な性質

クロミズムとは、物質の色や蛍光などの光学的特性が、外部からの刺激によって可逆的に変化する現象です。この性質を持つ物質をクロミック物質と呼びます。多くの場合、分子の電子状態の変化が色変化の根本原因となっています。クロミック物質は自然界にも存在しますが、近年は、目的の色変化を示すように分子設計された人工物質も数多く合成されています。

クロミズムを引き起こす刺激としては、熱、光、電気、溶媒、圧力などが知られています。また、金属錯体などが環境や外部刺激により可逆的に変色する場合を、クロモトロピズムと呼ぶこともあります。

様々なタイプのクロミズム

1. サーモクロミズム (Thermochromism)

サーモクロミズムは、温度変化によって引き起こされるクロミズムで、最も一般的なタイプです。温度の上昇または低下に伴い、物質の色が変化します。この現象は、スマートウィンドウなどの開発に利用されています。例えば、気温が上がると自動的に日光を遮断するガラスなどが、サーモクロミズムの応用例として挙げられます。

2. フォトクロミズム (Photochromism)

フォトクロミズムは、光によって引き起こされるクロミズムです。多くの場合、光照射によって分子構造が変化（異性化）することで発現します。光ディスクなどの記憶材料への応用が期待され、アゾ[[ベンゼン]]、スピロピラン、ジアリールエテンなどが代表的なフォトクロミック物質として盛んに研究されています。

3. エレクトロクロミズム (Electrochromism)

エレクトロクロミズムは、電気的な酸化還元反応によって生じるクロミズムです。金属イオンなどのレドックス活性部位を持つ物質に見られます。電気的に色を変えることができるため、記憶材料やディスプレイ材料への応用研究が進められています。近年では、ボーイング787の窓に従来のシェードに代わる技術として採用され、広く知られるようになりました。

4. ソルバトクロミズム (Solvatochromism)

ソルバトクロミズムは、溶媒の種類によって色が変化するクロミズムです。溶質分子の電子軌道のエネルギー準位が、溶媒の極性、屈折率、水素結合などの分子間相互作用によって影響を受け、吸収される光の波長が変化することで起こります。金属錯体のソルバトクロミズムでは、溶媒和（溶媒分子が金属に配位すること）の有無や電子のスピン状態の変化が大きく関わっています。

ソルバトクロミズムを示す[色素]]をソルバトクロミック色素と呼び、Reichardt's dyeなどが代表例です。この色素は、溶媒の性質を調べる目的でも用いられています。金属錯体では、[Ni(acac)(tmen)]BPh4などがソルバトクロミズムを示す例として知られています。身近な例としては、湿度変化によって色が変わる塩化コバルト] が挙げられます。無水状態では青色ですが、水が存在すると赤色に変化するため、[[湿度計などにも利用されています。

その他のクロミズム

上記の他に、圧力によって色が変わるピエゾクロミズム、溶媒蒸気の作用によって色が変わるベイポクロミズムなども知られています。

クロミズムの応用

クロミズムは、様々な分野で応用されています。例えば、

スマートウィンドウ
光ディスクなどの記憶材料
ディスプレイ材料
センサー
* 湿度計

などです。今後も、新たなクロミック物質の開発や、その応用技術の進展が期待されています。

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