クロム酸塩

クロム酸塩と二クロム酸塩：性質、用途、安全性

クロム酸塩と二クロム酸塩は、クロムを含む化合物で、それぞれクロム酸イオン(CrO₄²⁻)と二クロム酸イオン(Cr₂O₇²⁻)を含みます。クロム酸塩は鮮やかな黄色、二クロム酸塩は鮮やかな橙色を呈する水溶性物質です。

化学的性質

クロム酸塩と二クロム酸塩に含まれるクロム原子の酸化数はどちらも+6で、これは六価クロムとして知られています。六価クロムは強力な酸化剤であり、様々な酸化還元反応に関与します。水溶液中では、クロム酸イオンと二クロム酸イオンはpHに依存した平衡状態にあり、酸性条件下では二クロム酸イオンが、アルカリ性条件下ではクロム酸イオンが優勢になります。この平衡はルシャトリエの原理に従います。

この平衡関係は、以下の化学式で表されます。

2CrO₄²⁻ + 2H₃O⁺ ⇌ Cr₂O₇²⁻ + 3H₂O

この性質を利用して、クロム酸塩や二クロム酸塩は酸化剤や酸化還元滴定の試薬として用いられます。酸化還元反応によって、六価クロムは還元され、青緑色の三価クロムとなります。

ナトリウム、カリウム、アンモニウム塩などのクロム酸塩や二クロム酸塩は水に溶けやすい粒状の固体で、化学実験で広く用いられます。一方、重金属、ランタノイド、アルカリ土類金属のクロム酸塩や二クロム酸塩は水に溶けにくい性質を持ちます。

かつては、水に溶けにくいクロム酸塩が黄色顔料として用いられていましたが、毒性、耐光性の弱さ、硫化水素による黒変といった問題から、製造・使用が制限されています。水に溶けにくい二クロム酸塩は顔料としての用途はなく、水に溶けにくいクロム酸塩も顔料以外の用途はほとんどありません。そのため、これらの化合物の有用性は大きく低下しています。

用途

クロム酸塩と二クロム酸塩は、いくつかの産業用途で利用されてきました。主な用途としては以下のものが挙げられます。

環境解析: 化学的酸素要求量(COD)の測定に用いられ、水質分析などに役立っています。
金属防蝕剤: 亜鉛やアルミニウムなどの金属の腐食を防ぐ防食剤として使用されています。

クロム酸塩鉱物

鉱物学では、クロム酸塩からなる鉱物をクロム酸塩鉱物と呼びます。自然界では稀少な鉱物ですが、紅鉛鉱などが知られています。アタカマ砂漠ではカリウムを含むクロム酸鉱物が発見されていますが、非常に希少です。

安全性

クロム酸塩と二クロム酸塩は発癌性を持つことが知られています。六価クロム化合物は全て毒性と発癌性を有すると考えられています。そのため、労働安全衛生法では「クロム酸およびその塩」が第2類特定化学物質に指定されており、取り扱いには注意が必要です。

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