クロム鉄鉱

クロム鉄鉱：クロムの主要鉱石

クロム鉄鉱は、鉄、マグネシウム、そしてクロムを主要な構成成分とする酸化鉱物です。その色は黒色を基調としていますが、場合によっては茶色みを帯びていることもあります。モース硬度は5.5と比較的硬く、(Fe,Mg)Cr₂O₄という化学式で表されます。結晶構造はスピネル型と呼ばれる構造で、磁[[鉄鉱]]などと同じ構造を持つスピネルグループに属します。

クロム鉄鉱の特筆すべき点は、その組成の可変性です。マグネシウムの含有量によって、鉱物の性質が変化します。鉄よりもマグネシウムの比率が高い場合、クロム苦土鉱（MgCr₂O₄）となります。両者の間には固溶体が存在し、これは一般的に「クロムスピネル」と呼ばれています。また、鉄の代わりにアルミニウムが含まれる場合もあります。鉄を含むものの、その磁性は非常に弱いか、ほとんど無いのが特徴です。

地質学的な観点から見ると、クロム鉄鉱は主にかんらん岩や変成岩といった岩石中に見られます。これらの岩石中に含まれるクロム鉄鉱は、クロムを産出する上で極めて重要な鉱石鉱物として認識されています。興味深いことに、クロム鉄鉱は灰クロム柘榴石という鉱物と共存することが多く、地質調査においては、これらの鉱物の組み合わせが重要な手がかりとなる場合があります。

クロム鉄鉱の用途は、主にクロムの原料としてです。クロムは、ステンレス鋼などの合金の製造に不可欠な元素であり、クロム鉄鉱はその主要な供給源となっています。そのため、クロム鉄鉱の産出量は、世界の金属産業に大きな影響を与えています。

さらに、クロム鉄鉱は学術研究においても重要な役割を果たしています。その結晶構造や化学組成は、地球科学や鉱物学の研究に役立てられており、地球内部の形成過程や鉱物生成メカニズムの解明に貢献しています。研究者たちは、クロム鉄鉱の分析を通して、地質時代における環境変化やプレートテクトニクスといった様々な情報を推測することが可能です。

クロム鉄鉱に関する研究は、鉱物学、地球化学、地球物理学など、多岐にわたる分野で継続的に行われています。その組成や生成条件、そして産状に関する更なる知見の蓄積が、今後の資源開発や地球科学研究の発展に繋がることが期待されています。クロム鉄鉱は、私たちが普段何気なく使っている様々な製品に繋がっている、重要な鉱物資源なのです。

参考文献

黒田吉益、諏訪兼位『偏光顕微鏡と岩石鉱物 第2版』共立出版、1983年
松原聰『日本の鉱物』学習研究社〈フィールドベスト図鑑〉、2003年
国立天文台 編『理科年表 平成20年』丸善、2007年

関連事項

鉱物
酸化鉱物
鉱物の一覧
鉱石鉱物
スピネル
灰クロム柘榴石

外部リンク

Chromite（mindat.org）
Chromite Mineral Data（webmineral.com）
Spinelグループ（地球資源論研究室）

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