ダントロレン

ダントロレンの基礎知識

ダントロレン（Dantrolene）は、主に筋弛緩薬として知られている医薬品です。リアノジン受容体を遮断し、骨格筋における興奮の伝達を制御することにより、筋肉の緊張を緩和します。この作用で、筋小胞体からのカルシウムイオン（Ca2+）の放出が抑制され、結果として筋弛緩が促進されます。一般には「ダントリウム」という商品名で販売されています。

主な適応症

ダントロレンは、全身麻酔下で稀に発生する悪性高熱症の治療において第一選択の薬剤とされています。また、以下の疾患にも幅広く使用されます。

• - 脳血管障害後遺症
• - 脳性麻痺（CP）
• - 外傷後遺症（頭部外傷、脊髄損傷等）
• - 頭頸部の脊椎症
• - 脊髄小脳変性症（多系統萎縮症）
• - 筋萎縮性側索硬化症（ALS）
• - 多発性硬化症（MS）
• - その他の痙性麻痺に伴う症状

製剤と価格

ダントロレンは、経口薬と注射薬の形式で提供されます。日本ではオーファンパシフィック社が製造・販売しており、経口剤の「ダントリウムカプセル25mg」は一カプセル18.9円ですが、注射薬「ダントリウム静注用20mg」は一瓶9039円 と、高額です。このため、常備している病院は少なくなっています。特に悪性高熱症の危険に備えるため、720mg（体重70kgと想定）の備蓄が推奨されていますが、そのコストは325,404円にも上ります。

禁忌と注意点

ダントロレンの経口薬にはいくつかの禁忌が設定されていますが、注射薬には禁忌はありません。ただし、以下の条件を持つ患者には慎重に使用する必要があります。

• - 閉塞性肺疾患や心疾患による心肺機能の低下が顕著な患者
• - 筋無力症の患者
• - 肝疾患の患者

さらに、妊婦や授乳中の女性に関しても慎重な対応が求められます。妊婦への使用は、危険性と有益性を比較した上で重要な場合のみ行うべきです。また、母乳中に移行するため、授乳は控えるか投与を中止する必要があります。

副作用

ダントロレンの使用に際してはさまざまな副作用が見られる可能性があります。共通する重大な副作用として、呼吸不全、ショック、アナフィラキシー、イレウスなどがあります。また、経口薬特有の副作用には黄疸や肝障害も含まれます。

中枢神経系においては、混乱や抑うつ、頭痛、不眠などが報告されています。消化器系でも異味や食欲不振、吐き気、下痢が生じることがあります。投与後数日間、筋力低下を感じることもあります。

開発の歴史

ダントロレンは1967年に初めて紹介され、その後1975年に悪性高熱症への有効性が確認されました。この薬剤はその後も多くの研究の対象となり、1982年には人を対象とした臨床試験が実施され、実際の有効性が立証されます。以前はプロカインが唯一の選択肢で、その有効性は限定的でしたが、ダントロレンの登場は治療の選択肢を広げました。

まとめ

ダントロレンは多様な筋肉の痙縮を含む様々な健康状態に対する治療法として重要な役割を果たしていますが、その使用には注意が必要です。特に副作用や禁忌に対する理解を深めることが、患者の安全を守るために不可欠です。

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